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余録

芭蕉の句に「さし籠る葎の友か…

 芭蕉(ばしょう)の句に「さし籠(こも)る葎(むぐら)の友か冬菜(ふゆな)売り」がある。葎はみすぼらしい家をさし、江戸は深川の芭蕉庵に引きこもっている隠遁(いんとん)生活を表す。たまにやって来る冬菜売りが古くからの友のように感じられるのである▲江戸で冬菜といえば、小松川で栽培されたコマツナである。タカ狩りに来た将軍に献上して「小松菜」と名づけられたと言い伝えられ、江戸の雑煮(ぞうに)菜として愛された。冬先の霜に数回あたると葉が柔らかく、おいしくなるといわれた▲コマツナだけでない。ホウレンソウ、ハクサイ、ダイコン、ネギなどの冬菜、いや冬野菜は寒くなるほど甘くなり、食べれば体が温まるという。寒さによる凍結を逃れるため、細胞内の糖分の濃度が増えるからだと聞いたことがある▲昨秋の台風や長雨などの影響で、葉物を中心に野菜の価格高が続いている。農林水産省の食品価格動向調査によると1キロ当たりの小売価格はレタスが平年の2・4倍、ハクサイやダイコンが2倍で、当面は高値が続く見通しだそうな▲ついでながらコマツナも東京の市場の卸値は昨年の2~3倍という。消費者にとって日々の食卓を直撃する野菜の高値である。先月の消費動向調査で4カ月ぶりに消費者心理が悪化したのは、野菜とガソリンの価格上昇の影響だった▲「猪(しし)煮るや二度ほど雪の来たる葱(ねぎ)」は細見綾子(ほそみ・あやこ)の句。鍋料理に欠かせない冬野菜の甘みである。体をぽかぽかと温めてくれるその恵みに感謝すればこそ、消費マインドを冷やす高値の今後が気がかりだ。

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