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山陰温泉紀行

/10 吉賀 木部谷 先祖からの贈り物 間欠泉、地元食材の料理が人気 /鳥取

「松乃湯」女将の田原久子さん=鳥取県吉賀町柿木村木部谷で、横井信洋撮影
雪に覆われたこの日も、間欠泉は勢いよく噴き出した=鳥取県吉賀町柿木村木部谷で、横井信洋撮影

 待つこと約20分。地表から泡が吹き出し始めた。しぶきをあげて噴出する温泉水は次第に高くなり、1メートルを超えた。噴き出した直後は透明だが、赤茶色に変わり、硫黄の臭いもしてくる。勢いは5分ほど続く。島根県吉賀町柿木(かきのき)村木部谷(きべだに)の木部谷温泉「松乃湯」の裏山にある源泉の間欠泉だ。

     松乃湯が開業したのは1988年。女将の田原久子さん(80)によると、元々「弘法の湯」として古くから知られる温泉地だった。戦前から地元の人たちが、まきを持ち寄って湯を沸かしたり、近くにある旧小学校長住宅に竹の導水管で温泉水を引いたりして使っていた。夏には汗もに効くと、くんで持ち帰る住民もいたという。間欠泉は70年、ボーリング調査で噴出した。

     保健所の指導もあり、地元住民らによる利用は87年に休止した。「温泉は田原家の先祖が残してくれた贈り物。地域の人たちがずっと楽しめるようにしよう」。田原さんは翌年、夫の治栄(はるしげ)さん(83)と共に、温泉宿の経営に乗り出した。

     それぞれ会社員と、小学校教諭を辞め、手探りでのスタートだった。田原さんは「開業から10年ほどたった時、宿泊した同業者から『よく頑張ったね』と言われた」と感慨深げに振り返る。

     温泉は茶褐色で、浴槽の底が見えないほどだ。鉄分やカルシウムを多く含み、神経痛などに効用があるという。間欠泉の珍しさもあり、今や全国から観光客が訪れる宿になった。

     「ばあちゃんの田舎料理ですよ」。田原さんは謙遜するが、地元産の食材を生かした料理も人気の理由だ。有機無農薬栽培の柿木ブランドの米をはじめ、田原さんらが採ってきた山菜や育てた野菜、清流で知られる高津川のアユなどが使われている。

    昼の日替わり定食には、地元産の食材が多く使われている=鳥取県吉賀町柿木村木部谷で、横井信洋撮影

     昼の日替わり定食(750円)は、季節の山菜、野菜が中心で、メニューに合わせて田原さんが治栄さんに「大根とネギを収穫して」などと声を掛ける。寒い日には、体が温まるイノシシ肉と大根の煮込みを出すなどの気遣いも。定番となったオリジナルの牛乳豆腐を目当てに訪れる県外のリピーターも多いという。

     同級生が栽培した黒豆や、農家が提供してくれた規格外の野菜も大切な食材だ。「地域の人たちに支えられている」と田原さんはしみじみ思う。【横井信洋】=つづく


    木部谷温泉「松乃湯」

     中国道六日市インターから車で約20分。石見交通バス「木部谷」バス停から徒歩3分。入浴料は1回450円、半日700円、1日1100円。宿泊は1泊2食付きで7900円。定休日は毎月6、16、26日。問い合わせは0856・79・2617へ。

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