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余録

新古今和歌集の選者だった歌人、藤原定家は…

 新古今和歌集の選者だった歌人、藤原定家(ふじわらのていか)は愛猫家だったという。妻の飼いネコをもらい受け、かわいがっていたが、ある時屋敷に侵入したイヌにかみ殺されてしまう。「悲慟(ひどう)の思い」と日記に書き残した▲彼は「猫又(ねこまた)」と呼ばれた化け猫の話も記している。奈良で人をかみ殺した猫又が退治された話や、少年の頃に京都であった騒動にふれ、その後に起こった奇怪な病気の流行を伝えている(武光誠(たけみつ・まこと)著「猫づくし日本史」河出書房新社)▲猫又はネコが老成して人を害するようになった妖怪で、平安時代末から記録に現れる。徒然草(つれづれぐさ)にも話があるから人気の話題だったらしい。定家のいう騒動と疫病は関係なかろうが、ネコも古びれば思わぬ魔力を振るうとみられたのだ▲さて、こちらは因果関係がはっきりしたというネコからの感染症である。一昨年春に屋外でネコに餌やりをしていた福岡県内の60代女性が「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」で亡くなっていたとの厚生労働省の発表である▲この病気、ネコやイヌがもつ細菌による人獣共通感染症で、国内での死亡例の確認は初という。症例の多くはペットからの感染とみられ、のどの痛みやせきが出て、ジフテリアに似た症状を示すそうだ。治療には抗菌薬が有効という▲「動物との過度な接触は避け、触れ合った後は手洗いを」と当局はいうから、ネコかわいがりもほどほどにということらしい。愛猫、愛犬を人に害をなす妖怪に変じさせぬよう気を使うのも愛情というものだ。

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