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 ってよろこおんなたち。胴上どうあげをするひとたち。そのわきで、ひとりがきすわおとこ

     わたしはマフラーにかおめ、興奮こうふんうずからはなれた。

     園田先生そのだせんせい連絡れんらくしないと。作曲法さっきょくほう先生せんせい妥協だきょうゆるさず「今日きょうやるべきことを今日きょうじゅうわらせなかったら、合格ごうかくなんて無理むりなんだよ」ときびしくわれていた。受験直前じゅけんちょくぜんには、レッスンの回数かいすうやして熱心ねっしん指導しどうしてくれた。

     先生せんせいは、すぐ電話でんわた。

     「かりました」

     「そうですか、おつかれさん。じゃ、つぎのところへはや電話でんわしなさい。じゃ」

     あっけなく電話でんわれた。先生せんせいらしい。こんなとき冷静れいせい。そして、これからやるべきことをまた指示しじしてくれる。あったかい。

     「つぎのところ」の電話でんわは、担任たんにん児玉先生こだませんせいこまかいことにはこだわらない、なんでもあっさりの先生せんせい。でも掃除そうじをサボったときは、こっぴどくしかられた。ていないようで、どこかでているのだ。

     電話でんわがつながると、地下鉄ちかてつ発車音はっしゃおんこえた。

     「なんだ、みじかめならいいぞ」

     「あ、はい、えっと、かりました」

     「ほんとかー!」

     先生せんせいおおきなこえが、電話でんわこうで、えきのホームにひびわたる。きっとまわりのひとたちに迷惑めいわくだろう。想像そうぞうすると、しそうだった。そして、すこしだけきそうになった。

     最後さいごは、森先生もりせんせい高校こうこう音楽おんがく先生せんせいだ。たっぷりとしたおなかをし、おおきなこえでオペラをうたいながら廊下ろうかあるいたり、競馬けいば新聞しんぶんあたまにかぶってピアノのまえていたりする、ちょっとわった先生せんせい。でも、先生せんせいのピアノの音色ねいろは、ためいきるほどうつくしい。

     そんな森先生もりせんせいも、大学受験だいがくじゅけん相談そうだんをしたから、きびしくなった。

     おんかえす……ない。

     大学だいがく校門こうもんたところで、携帯けいたいにメールがとどいた。

    職員室しょくいんしつで、副校長ふくこうちょうおこられてた。ま、いつものことだけど。で、かった?>

     わたしはちいさくわらい、携帯けいたいじた。いまからまっすぐ高校こうこうって、職員室しょくいんしつ先生せんせい直接伝ちょくせつつたえよう。

     えきへ、いそぐ。速足はやあしで。はしって。

      + + + +

     短編集たんぺんしゅう「せんせい。」には、不良生徒ふりょうせいとにこっそりギターをおそわる先生せんせいや、どうしても1ひとり生徒せいときになれない先生せんせい生徒せいとにまっすぐぶつかる先生せんせいなど、いろんな先生せんせいたちがてきます。

     大人おとなになった卒業生そつぎょうせいが、「どこかでていてくれたら、うれしい」といます。わたしもそうおもっています。

     本気ほんきおこって、応援おうえんして、よろこんでくれた先生せんせいたちをおもすと、背筋せすじびる。がんばらなくちゃ。そんな気持きもちになれるのです。


    『せんせい。』

    重松清しげまつきよしちょ

    新潮文庫しんちょうぶんこ 562えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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