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社説

安倍首相の施政方針演説 挑発を抑えたのは前進だ

 新年度予算案などを審議する通常国会が始まり、安倍晋三首相が施政方針演説を行った。

     首相は昨年の衆院選と同様、少子高齢化を「国難」と呼び、「少子高齢化を克服するために、我が国の社会保障制度の改革を力強く進めていかなければならない」と訴えた。

     だが、その具体策が来秋に消費税率を10%に引き上げる際の増税分の使途変更では物足りない。

     首相が今国会の最重要課題に位置づけたのが「働き方改革」だ。長時間労働の規制を強化し、正規・非正規雇用の格差解消を目指す方向性は理解できる。

     しかし、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の導入と一括して法案化する政府の姿勢は疑問だ。長時間労働を助長する懸念は拭えない。切り離した方が与野党の議論も深まるのではないか。

     「人づくり革命」「生産性革命」という新しい看板も、少子高齢化を前提に限られた人材を活用し、経済活性化を図る政策だ。これまで掲げてきた「1億総活躍」などのスローガンもまだ総括されていない。

     昨年までの演説では野党に対し「ただ批判に明け暮れ」などと挑発を繰り返してきた首相だが、今回はそれが影を潜めた。敵か味方かに固執する従来の政治手法では、少子高齢化は乗り越えられまい。

     首相は演説冒頭、150年前に会津の白虎隊で新政府軍と戦った後、東京帝国大総長などに登用された山川健次郎のエピソードを紹介した。山口県選出で長州の立場から明治維新を語ることの多い首相があえて元会津藩士の活躍に触れたのは、野党との融和姿勢の表れであろうか。

     憲法改正については各党が具体案を国会に持ち寄り、議論が進展することへの期待感を示すにとどめた。

     昨年の衆院選で勝利した余裕も感じられる。今年9月の自民党総裁選まで無難な政権運営に努めるのかもしれない。3選されれば、2021年までの長期政権が視野に入る。

     首相は長期的な課題に与野党の枠を超えて取り組もうと呼びかけた。野党への挑発を抑えたのは前進だ。

     少子高齢化とその先にある人口減少問題は長期的対応を必要とする。言葉通りの取り組みを期待したい。

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