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段ちゃんの「知っておきたい!中国のコト」

第11回 あこがれの部活と私の青春=段文凝

中国で知った“部活”という日本語

 去年の冬のこの時期に、新しく始めた趣味があります。スノーボードです。私は運動があまり得意ではありません。ずっとそんな自分を変えたくて、自分でも楽しめそうなスポーツはないかと探していました。ある時、仲の良い友達にこっそり相談したところ、今の時期にぴったりの、スピード感を味わえる面白いスポーツがあるからと誘われ、去年初めてスキー場に出かけました。参加したのは私を含めて総勢12人。留学生や会社員など、いろいろな立場や仕事の人がいてとてもにぎやかな団体でした。私はスキー場に出て、初めてスノーボードのウエアに袖を通してボードを足に装着しましたが、初めは立つのがやっと。まったく滑れませんでした。ですが、そばで見ていたメンバーの方の何人かが私に立ち方や滑り方を丁寧に教えてくれて、少しずつ滑れるようになりました。後日、全身が筋肉痛になったのはご愛嬌ですが・・・・・・。なぜ急にこんな話を始めたのかというと、私には日本に来る前からあることにすごく憧れていたからです。そのあることとは“部活”です。

     私が“部活”という言葉を初めて知ったのは、中国で見た日本のアニメの中でした。あるアニメのヒロインが、放課後に運動着に着替えて校庭で運動を始めたのを見て、当時の私は頭の中で「なんで学校が終わったのに家に帰らないのだろう…」と思っていました。ストーリーを見て、すぐにそれが“部活”という、一種の課外活動だということを知りました。日本では中学生や高校生になると“部活”、大学生になると“サークル”に所属して、好きな運動や、楽器の演奏や、絵画の制作などに打ち込みます。私が通っていた早稲田大学もサークル活動が盛んなことで有名ですが、当時の私は専門の勉強と並行してNHKの「テレビで中国語」に出演していたので、残念ながらサークル活動に参加する時間はありませんでした。

    スノーボードにはまってます!今年も友達と行ってきます!

    中国の“部活”…その実態は?

     もっとも、中国でも“部活”が全くないわけではありません。私がまだ天津にいたころ、通っていた大学で、一時期“演劇サークル”に所属していたことがありました。ちなみに中国語でサークルは“社团(シャートゥアン/社団)”といいます。私は大学でアナウンサーになるための勉強をしていました。演劇サークルは、アナウンサーになるためにも必要な発声方法を学べて人前で話す訓練にもなるということで、大学が許可していたサークルの一つでした。なので、参加している学生たちも、趣味や遊びというよりは、将来の仕事のために必要だから、という気持ちが強かったと思います。

     今も覚えていますが、その演劇サークルで私が演じたのは子供の役でした。物語の舞台は今から100年ほど前の中国で、ある一族の盛衰を淡々と描く内容でした。大人たちが中心の話なので、子供役の私はあまりセリフもなく、正直物足りませんでした。私は内心、日本のアニメの中で登場人物たちが可愛い制服を着て学校に通い、放課後にテニスやスキーなど面白そうな部活に純粋に没頭しているのを見て、ちょっとうらやましいと感じていました。

    日本に来てからも続いた“部活”へのあこがれ 私の“迷走”エピソード

     その後、私は大学を卒業し、天津テレビ局のアナウンサーの仕事を経て、日本にやって来ました。日本では、中国語や中国の文化をさまざまなメディアを通じて多くの人に伝えるという新しい仕事を見つけ、それまで中国で歩んできた“アナウンサー”とは違った道を歩き始めました。本当に幸運なことに、中国でも日本でも私は自分の好きな仕事に恵まれ、夢中で取り組むことができました。ですが、胸の奥底で“部活”に対するあこがれはずっと消えることはありませんでした。

     よく日本の友人との雑談の中で「段さんは学生時代どんな部活をやっていたの?」「どんなスポーツが好き?」と聞かれることがあります。そんな時、これまでの私はすごく困っていました。学生時代から社会人になるまで、基本的に“勉強”や“アナウンス訓練”以外のことをしていないので、純粋に自分の趣味と言えるものを持っていなかったからです。当時の私の“迷走”ぶりが分かるエピソードが一つあります。私は日本に来て間もない頃、“部活”気分を形だけでも味わえないかと、こっそり“ある物”を買いました。それは、女子高校生の制服です。ある友人から、日本には制服のない学校もあり、こうした学校に通う女子高校生のために、ファッションアイテムとしての制服を売っている専門店があると聞き、自分でも一着購入してみました。とてもドキドキしましたが、この制服を着て女子高校生のふりをして街を歩いたこともあります(笑い)。部活帰りの女子高校生の気分が味わいたかったのです。

     ですが、部活そのものをしたわけではないので、当然心から満足することはできませんでした。そこで2年前からは泳げない自分のコンプレックスを克服するために“スキューバダイビング”を、去年からは“スノーボード”を、それぞれ始めました。ダイビングでは30メートルの深さまで潜ることができるようになりました。スノーボードは何とか立つこととゆっくり滑ることはできるようになったので、今年はぜひ格好良く滑れるようになりたいです。

    本当の気持ちに向き合って 時には人の力も借りて

     ここまで、私の部活へのあこがれについてお話してきました。私は、学生時代からずっとしたくてできなかったことに、いま挑戦しています。自分の本当の気持ちは、自分でしか分かりません。また自分自身でさえ、知ろうと思わない限り、なかなか気づけないものです。

     以前、私は日本のある友人からこんな相談を受けたことがありました。「自分は大学時代に映画サークルに所属していました。でも、将来のことを考えて語学留学をしたため、サークル活動を途中でやめてしまいました。いま、映画とは違う業界の会社で働いていますが、正直まだ映像を撮りたい気持ちがあります。でも、もう遅いでしょうか」と。私は意外に思うのですが、日本の多くの方は年齢によって何かをあきらめなければならないと、思い込んでいないでしょうか。

     気持ちに蓋をしたり、忘れようとしたり、他の代替行為で妥協しようとしたり。その瞬間は自分をごまかせても、強い思いであればあるほど、いつまでもあなたの中で、あなた自身がその気持ちに気づくのを待っています。一人で踏み出すのが怖ければ、本当に信頼できる仲間や、パートナーに付き合ってもらうのでもいい。自分一人ですべてを抱え込まなければいけない、というのも思い込みです。時には人の力を借りたり、巻き込んだりしてもいい。お互い様です。もしあなたが、今、自分の中にいつまでもくすぶっている変わらない思いに気づいているのなら……今年は思い切って“部活”を始めて、私と一緒に“青春”しませんか?

    私の制服姿はいかがでしょうか?少し恥ずかしいですが、日本の制服はあこがれです!

    段文凝

    (だん・ぶんぎょう)中国・天津市出身。2009年5月来日。同年まで天津テレビ局に所属。2011年4月より、NHK教育テレビ『テレビで中国語』にレギュラー出演。(2017年3月卒業)2014年早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース卒業。日中間を行き来し講演活動を行い、「かわいすぎる中国語講師」として幅広い層に人気を得ている。2015年、2016年に毎日新聞夕刊「ひ・と・も・よ・う」で取り上げられた。2017年現在、NHKWORLDのラジオにレギュラー出演。舞台や映画などを中心に女優としても活躍している。

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