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紙面審ダイジェスト

独自色発揮 北核実験場近くで染色体異常

 紙面審査委員会は、編集編成局から独立した組織で、ベテラン記者5人で構成しています。読者の視点に立ち、ニュースの価値判断の妥当性や記事の正確性、分かりやすさ、見出し、レイアウト、写真の適否、文章表現や用字用語の正確性などを審査します。審査対象は、基本的に東京で発行された最終版を基にしています。指摘する内容は毎週「紙面審査週報」にまとめて社員に公開し、毎週金曜日午後、紙面製作に関わる編集編成局の全部長が集まり約1時間、指摘の内容について議論します。ご紹介するのは、その議論の一部です。

     以下に出てくる「幹事」は、部長会でその週の指摘を担当する紙面審査委員会のメンバーです。「司会」は編集編成局次長です。

    <1月12日>

    ■見出しは「被告」か「元信者」か

    幹事 菊地直子被告(46)の上告審決定で無罪が確定したことを伝える2017年12月27日夕刊1面の見出しは<オウム菊地被告 無罪確定へ/都庁爆発物事件 上告棄却>と、本紙は「被告」を使った。他紙を見ると――

    ▽朝日1面<菊地直子元信徒 無罪確定へ/オウム事件 最高裁、上告棄却>

    ▽読売1面<菊地被告 無罪確定へ/オウム元信者/都庁爆弾 最高裁、上告棄却>

    ▽東京1面<菊地元信者 無罪確定へ/上告棄却 オウム都庁爆弾事件>

    ▽日経社会面<菊地元信者、無罪確定へ/オウム爆弾事件 検察の上告棄却/殺人未遂ほう助、認めず>

    ▽産経1面(28日朝刊)<菊地元信者 無罪確定へ/オウム事件/最高裁、上告を棄却>

    「被告」と「元信徒」「元信者」に分かれた格好だが、本紙はどう判断したのか。決まりがあるなら教えてほしい。本紙は東京高裁判決時も「被告」。最高裁決定について、検察と元信者側双方が期限の4日までに異議を申し立てず無罪が確定したことを伝える本紙6日朝刊社会面(共同電)は<菊地元信者 無罪が確定>だった。

     司会 (見出しを含め編集を担当する)情報編成総センター。

     情報編成総センター編集部長 決まりがあるかだが、毎日新聞用語集には犯罪の容疑者や起訴された被告には、名前の後に呼称を付ける、となっている。無罪が確定した者は敬称を付ける、としている。無罪を確定したことを伝える紙面では、元信者と付けることで問題ない。無罪確定へ、という段階では明確な決まりはない。他紙もこれだけ分かれているから、それぞれに悩んだのだろうと思う。夕刊で入ってきた時に、編集部長や(当日の編集責任者である)交番、社会部で相談した結果、このようになった。1面の見出しは<被告>、社会面の受けの見出しは<元信者>、1面記事で2度目以降は「元信者」、社会面は「元信者」とすることにした。現時点では被告であり、無罪が確定する可能性が非常に高いが、異議を申し立てる可能性もゼロではないから。それで、初出だけは「被告」、それ以外は「元信者」でとなった。他紙では、朝日は締め切りが早い版では「被告」にしていた。(締め切り時間の遅い)4版では「元信徒」になっていたので、朝日も悩んだのかと類推した。夕刊帯では、共同が「元信者」という形で流してきた。日経、産経、東京はそれにかなり引っ張られた部分があるのではないかと思う。

     司会 社会部は補足があるか。

     社会部長 センターからあった説明を踏まえてこういう形になっている。あと、「元信者」なのか、「さん」なのかという議論もしている。長期間逃亡しているし、「さん」には違和感があるなと。実際には時間の壁が阻んでいるとか、薬物を運んだという実行行為をしたとか、ということで、「さん」まではどうかと。呼称を考える中で、「元信者」となった。書き方については、過去のいろいろな報道でもそうだが、無罪となった事件では前文では「被告」、それ以降は被告を使わない、という形にしている。顔写真の説明は「被告」としているが、それも議論して判断したということだ。

    □独自色発揮 北核実験場近くで染色体異常

     幹事 9日朝刊1面トップは、北朝鮮の地下核実験場(咸鏡北道<ハムギョン・プクド>吉州<キルジュ>郡豊渓里<プンゲリ>)付近に住み、2度の核実験後に脱北した元住民2人に、原爆被爆者にみられるような染色体異常が生じていることを報じた。北朝鮮の核実験は政治や安全保障の観点から報じられることが多いが、今回は住民被害に光をあてた。

     記事によると、脱北者の現状調査などを手がける民間研究機関「SAND研究所」や韓国統一省、原子力医学院が、吉州郡出身者の脱北者計51人を調査。その結果、核実験場から約27キロ離れた場所に居住し、2006年と09年の核実験後の11年に脱北した40代女性に染色体の異常が確認され、推定被ばく線量は累積320ミリシーベルトだった。12年に脱北した40代男性からも染色体異常が見つかり、推定被ばく線量は累積394ミリシーベルトだった。韓国側のデータを評価した星正治・広島大名誉教授(放射線生物・物理学)は「北朝鮮の核実験が要因として考えられる初めての結果ではないか」と分析した。2面で元住民に直接取材して生の声を伝えたことを含めて評価したい。そのうえで、いくつか確認などしたい。まず、元住民2人に染色体異常が生じていることなどは韓国で報じられており、記事にあるように「韓国側は『北朝鮮の居住環境がもたらす影響を評価する情報がないため、核実験の影響とは断定できない』と結論を避けている」。それに対して、本紙記事は「核実験による放射線の影響が疑われる」と指摘し、見出しにも<住民被ばくか>と取った。記事の根幹となるその根拠をもう少し明快に書いてほしかった。

     根拠は、星氏が韓国側のデータを確認、判明したことのようだ。旧ソ連・セミパラチンスク(現カザフスタン)の核実験場の調査もした星氏の見解は「放射性物質を含んだガスや粉じんを浴びた可能性がある。セシウムの数値など体内汚染に関するデータも確認する必要がある」「セミパラチンスクの状況とも似ており、北朝鮮の核実験が要因として考えられる初めての結果ではないか」。「星氏は『北朝鮮では実験場から放射性物質が漏れている可能性がある』と指摘する」とも書いてある。北朝鮮の核実験が染色体異常を引き起こした可能性が高いことに関する星氏の説明について、数字を入れるなどしてもう少し具体的、論理的に書いてほしかった。

     星氏は韓国側から直接データの提供を受けたのか、それとも記者が星氏にデータを見せたのかという疑問も生じた。また、韓国側はなぜ「核実験の影響とは断定できない」と結論を避けたのか。「北朝鮮の居住環境がもたらす影響」とは、どんな住環境でどんな影響なのだろう。

     司会 外信部。

     外信部長 韓国はデータを発表している。それを知った記者が、韓国の人(研究機関の人)に来てもらって、広島の知り合いの専門家に見てもらった。それで精査してもらって、こういう結論が出た。具体的な根拠は?との話だが、書いていること以上でも以下でもない。染色体異常が現れていて、その数値から推定できるのは被ばく以外考えられない、というのが広島の先生の見立てだ。ではなぜ、韓国は核実験の影響と結びつけないかというと、推測するしかないが、一つはこういうデータは、広島や長崎でデータを蓄積した日本が最も詳しく分析できる。日本人の研究者に見てもらわないと、最終的な結論が出ないと思う。韓国がそれをしなかった。これは北朝鮮の話で、北朝鮮の政府がやらないといけない話だ。ああいう国だから期待できない。でもなぜ、韓国はやらないのか、という話にもならない。韓国はこれまでのデータからは核実験と断定できない、というのはその通りだと思う。それを今回、広島に持ってきて、広島のデータと突き合わせると、こういう結論が導き出される。

     幹事 突き合わせた内容をもっと詳しく書いてくれれば。

     外信部長 もうこれだけだ。編集幹部とともに徹底的に精査してこうした。ガチガチに詰めた。こういう問題は、脇が甘ければそこを突かれるとわかっているから。はっきりしたものだけを書こうとした。この段階で、持っている情報でこれ以上の原稿は書けなかったと思う。

     司会 [ことば]に、広島の原医研でやった被爆による染色体異常の数とかのデータもあった。1細胞にいくつの損傷があるかなどのデータはあった。

     幹事 多くの人が徹底的に精査した後、原稿に全く関与していない人が読んでみることがあってもいいかもしれない。

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