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幸せの学び

<その187> 帝銀事件70年=城島徹

平沢貞通元死刑囚の獄中画を見る山際永三さん

 戦後の混乱期に起きた「帝銀事件」で死刑判決を受け、無実を叫びながら獄中死した平沢貞通(さだみち)元死刑囚(1892~1987年)の獄中画を展示する「帝銀事件70周年 故平沢貞通画伯執念の獄中画展」が2月4日まで、下町情緒が残る東京都台東区谷中の「ギャラリー・てん」で開かれている。1月22日、二十数点の作品を並べた会場を訪ね、降りしきる雪に「雪冤(せつえん):無実の罪をすすぎ、潔白であることを明らかにすること」(広辞苑)という言葉が脳裏に浮かんだ。

     「獄中の平沢さんの心境が伝わってきますね」。そう言いながら作品を見つめていたのは、画展を企画した「帝銀事件再審をめざす会」代表で映画監督の山際永三さん(85)だ。

     鉄格子の内側に真っ赤な花が浮かぶ「獄窓の花」、鉄格子の下にしゃがむ我が身の姿を描いた「うずくまる貞通」、理不尽な思いが燃え上がるような「猫怒る」、娘への思慕と思われる「霞中娘」など、平沢元死刑囚が獄中で描いた作品ばかりが掲げられていた。

     1948年1月26日、東京都豊島区の帝国銀行椎名町支店で都職員を装った男に赤痢予防薬と偽った青酸化合物入りの液体を飲まされた行員ら12人が死亡し、現金や小切手が奪われた。この「帝銀事件」発生から半年余り後に逮捕されたのが、北海道・小樽出身で、日本画の巨匠・横山大観に師事したことのある画家、平沢元死刑囚だった。

     55年に死刑判決が確定した後も、冤罪だと訴え続け、支援者の協力で描いた獄中画は数千点にものぼったという。「この大量毒殺事件は毒物に知識が皆無の画家には起こせない」……。冤罪への強い疑いが指摘されるなか、87年に獄中で95歳の生涯を閉じたが、遺族が2015年11月、第20次再審請求を東京高裁に申し立てている。

     「映画に携わっていることから冤罪事件に関心が及び、特に帝銀事件は戦後冤罪の原点とも言うべきものとして70年代から支援活動に加わりました」「今年は事件発生から70年。平沢さんの出身地の北海道以外では確かにこの事件を知らない人が多くなったと思います。この獄中画を通して帝銀事件を知ってほしい」……。展示画を引き立てる照明を念入りにチェックしながら山際さんはそう語った。

     ギャラリーの外を見ると、4年ぶりに都心を襲った大雪で家屋や路面が真っ白に染まり始めていた。それは「雪冤」を願って絵筆を握り続けた平沢元死刑囚が降らせたようにも思えた。【城島徹】

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