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子どもの社会的養護 施設から「家庭」へ転換

 さまざまな理由で親元で暮らせない子どもたちを育てることを「社会的養護」と言います。日本では多くの子が施設で生活していますが、国はより家庭的な環境で育てる方向にシフトしようとしています。どう変わるのでしょうか。【谷本仁美】

    8割が集団で生活 「親の虐待」多く

     社会的養護を受けている子は国内に約4万5000人いる。大きくは「施設養護」と「家庭養護」に分かれ、今は8割近くが施設養護だ。

     施設は子どもの年齢別に、乳児院や児童養護施設などがある。戦災孤児の収容が目的だった施設が多い関係で規模が比較的大きく、7割が定員20人以上。入所期間が長いのも特徴で、厚生労働省の2016年調査では児童養護施設にいる60%が3年以上、15%が10年以上暮らしていた。

     「施設にいる子は孤児」との認識は正しくない。約40年前の1977年では、入所理由の大半が「親の死亡や行方不明」だったが、08年になると「親の虐待」が最も多く、「親の精神疾患」も増えた。親がいても、家庭で適切な養育を受けられないという子が多くを占める。

     家庭養護の代表的なものは、原則18歳まで子どもを預かって育てる里親。家庭で5~6人を預かるファミリーホームを含め、里親が育てている割合(委託率)は年1%程度ずつ伸びている。

     子と実親の関係を法律上も切り離し、養親と新たな親子関係を結ぶ「特別養子縁組」という制度もある。原則6歳未満の子が対象で、実親の同意が必要。年間約500件の特別養子縁組が成立する一方、厚労省によると検討したが成立しなかったケースも年100件程度あるという。

    海外に比べ少ない里親委託 3歳未満75%を目標

     日本の児童1万人あたりの社会的養護が必要な子どもは17人(07年)で、カナダの107人、フランスの102人などと比べてとても少ない。ただ、先進国の主流は里親を中心とした家庭養護で、日本は施設収容の割合が高過ぎると海外から批判されてきた。

     「親は里親より施設に預ける方が抵抗が少ない」と話す関係者もいるが、健全な成長には早い時期から特定の養育者との「愛着関係」を築く必要性が指摘されている。国連も09年、施設養護は「児童の最善の利益に沿っている場合に限られるべきだ」という指針を示している。

     こうした背景から、16年に改正された児童福祉法では、子どもをより家庭に近い環境で養育する方針を明記。具体策として、厚労省の検討会が昨夏に「新しい社会的養育ビジョン」をまとめた。

     ビジョンには、施設から家庭への転換に向けた数値目標が並ぶ。例えば就学前の子は施設への新規入所を原則停止し、3歳未満の里親委託率を5年以内に75%以上に引き上げる。施設は専門的なケアの機能を高めるとともに、約10年以内に全施設の小規模化・地域分散化を進める。入所期間も乳幼児は数カ月以内に短縮する、といった具合だ。

     特別養子縁組も年間1000人以上に倍増させることを目指す。来年度からは民間の養子あっせん団体への助成を始めるほか、年齢制限の引き上げなども検討している。

    普及に新機関整備へ 「拙速」危ぶむ声も

     ビジョンの実現には課題もある。まず必要なのが、里親を増やすことだ。

     これまでは児童相談所(児相)が里親体験発表会などを開き、希望者を登録してきたが、地域差が大きく全体の伸びは鈍かった。そこで、里親の勧誘から研修、支援まで包括的に取り組む「フォスタリング機関」を各都道府県に新設する方針が示された。問題が起きた時、里親は「児相に相談したら子どもを取り上げられるかもしれない」と悩みを抱え込む傾向があり、この点の解決も期待される。

     一方、施設関係者からは、拙速な里親委託を危ぶむ声も上がる。東京都内の施設関係者は、里親との関係が不調になり、心身ともに傷ついて施設に戻ってくる子を少なからず見てきた。「専門職でも難しいケースの子を里親となった夫婦だけで育てていくのはリスクが高い。施設の方が複数の職員の目で見ることができるのでは」と話す。

     家庭養護そのものへの理解を高めることも大切だ。都内のある里親は、体験発表会に呼ばれると、参加者に「里親にならなくても、制度を理解し、世の中に知らせることはできる」と伝えているという。「実子でも里子でも、子育てを親の自己責任にするのではなく、社会がみんなで助け合う意識が必要」と訴える。

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