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社説

在外被爆者の賠償認めず 不公平を容認した判決だ

 海外に住む被爆者への賠償対応を一変させた国の主張に沿った判決だ。これでは救済の道が閉ざされてしまいかねない。

     広島、長崎で被爆後に帰国した韓国人被爆者31人の遺族151人が国に損害賠償を求めた集団訴訟で、大阪地裁は原告の請求を棄却する判決を言い渡した。

     在外被爆者は約30年という長期にわたって、国内被爆者と比べ支援内容に差を付けられていた。海外に移住すれば健康管理手当を打ち切るとする旧厚生省通達が2003年に廃止されるまで、在外被爆者は手当などの支給対象外だった。

     最高裁は07年に通達を違法と判断し、厚生労働相は在外被爆者や遺族の提訴があれば賠償する方針を示した。延べ約6000人と和解し1人あたり110万円を賠償してきた。

     ところが国は16年秋から一部原告の提訴に対して争う姿勢に転じた。被爆者の死亡から20年以上が過ぎて提訴した場合、賠償請求権が消滅するという民法の「除斥期間」に当たると主張し始めたのだ。

     今回、裁判所も国の理屈に沿った判断をした。ただし除斥期間には例外がある。「権利行使が困難で著しく正義、公平に反するような場合」には適用が制限されるという判例が出ている。

     既に和解した遺族の中には提訴時に除斥期間を過ぎていた遺族もいた。国は「16年春に除斥期間に気づいた。指摘が遅れて申し訳ない」と釈明したが、先に和解したケースと比べ不公平である。

     また今回提訴したのは、違法な通達のため援護が受けられなかった時期に亡くなった被爆者の遺族だ。最高裁が通達を違法と判断する以前に、日本の裁判所に提訴することが簡単ではなかったことは十分に想像できる。これらは適用の例外にあたるのではないか。

     原告は「除斥期間のハードルは高い」として控訴するかどうか慎重に判断するというが、国が和解拒否したのは大阪、広島、長崎3地裁の原告約930人のうち約600人に上り影響は大きい。

     「被爆者はどこにいても被爆者」が被爆者援護法の趣旨だ。司法による救済ができないならば、政治的な解決の道も探るべきではないか。

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