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紙面審ダイジェスト

死者が匿名なのはおかしい

 紙面審査委員会は、編集編成局から独立した組織で、ベテラン記者5人で構成しています。読者の視点に立ち、ニュースの価値判断の妥当性や記事の正確性、分かりやすさ、見出し、レイアウト、写真の適否、文章表現や用字用語の正確性などを審査します。審査対象は、基本的に東京で発行された最終版を基にしています。指摘する内容は毎週「紙面審査週報」にまとめて社員に公開し、毎週金曜日午後、紙面製作に関わる編集編成局の全部長が集まり約1時間、指摘の内容について議論します。ご紹介するのは、その議論の一部です。

     以下に出てくる「幹事」は、部長会でその週の指摘を担当する紙面審査委員会のメンバーです。「司会」は編集編成局次長です。

    <1月26日>

    ■死者が匿名なのはおかしい

     幹事 草津白根山の本(もと)白根山が23日、約3000年ぶりに噴火した。噴火で死亡した陸上自衛隊の隊員について、24日朝刊各紙はいずれも匿名とし、「男性陸曹長(49)」などと書いた。なぜだろうと疑問を持ったが、本紙の第2社会面に「死亡した隊員の氏名について、陸自は遺族の了解が得られていないとして公表していない」という説明があり、事情は分かった。しかし、自然災害による死者の名前を伏せるのは異例だ。死者に何か落ち度がある「不名誉な死」でもない。さらに、隊員が死亡したのはスキー訓練という公務の最中だ。遺族が了解していないというが、被害の検証のためにも実名発表と実名報道がぜひ必要ではないだろうか。このような発表手法を容認すると、例えば自衛隊が海外の戦闘で死亡した場合にも匿名で発表される恐れがあるのではないかという懸念さえ持った。

     25日朝刊で、各紙がそろって亡くなったのは伊沢隆行さん(49)だと報じた。(この段階では)陸自は公表していないが、関係者への取材で分かったと書いた。読売と東京は第2社会面に、陸自が実名を非公表としていることについて批判的な記事も載せた。読売によると、陸自は公務中の死亡事故について「遺族の同意を得た上で、(警察などの)捜査に支障がない場合、氏名を公表する」とのルールを定めている。これに対し、服部孝章・立教大名誉教授が「(今回は)公務災害であることは明らか」だとして「氏名が公表されない状況が続けば、報道機関が行政の対応について検証することが難しくなるなど、弊害が大きい」と批判したことも伝えた。また、東京によると、陸自は過去10年で25件の任務中の事故を公表したが、このうち実名を公表したのは3件にとどまったという。本紙にもこうした視点の記事が必要ではないか。

     司会 地方部。

     地方部長 どの段階で書くかは、紙面の優先順位がある。匿名というのはおかしいなと思っていた。匿名発表を批判する記事の掲載時期については結果的に今日(26日朝刊社会面)になってしまったが、優先順位によるところもあるので。

     幹事 防衛省や行政機関には実名発表の要請はしていたのか。

     地方部長 地元では、群馬県に要請したが、県は「自衛隊が公表していないから」の一点張りで、こちらとしては記者側から公表を強く要望した。一時険悪なムードになりかねないぐらい抗議したが、出なかったということだ。

     司会 防衛省を持つ社会部は。

     社会部長 自然災害で死者の名前を伏せるというのはおかしな話であって、防衛省でも記者クラブと陸自との間で、かなり激しくやり取りをした。出さない理由については陸自が「遺族の同意を得る」という内規があるということだった。そもそも内規自体がおかしいと指摘した。やり取りをして、結局遺族の了解が得られたということで公表された。そもそもの内規がおかしいということは、もっと早い時点で指摘をし、読売や東京のような形で書いておくべきだったと反省している。引き続き、こうした内規については問題だと取り上げていきたい。

     編集編成局次長 本来は警察が遺体を検視したときに身元を確認して発表するというのが、事故でも災害でも従来してきたことだ。今度も群馬県警が発表すべき事案だったが、なぜか、群馬県と自衛隊が匿名にしたので、24日の夕刊段階でも「なぜ、そうなったのか」と経緯を書いて、「御嶽山噴火の死者の名は長野県警が発表している」という記事を出している。ただ、「けしからん」とまでは書けなかった。群馬県警が出すべきところを県や防衛省をそんたくして出さなかったのではないかと思うので、検視したら名前を出すという流れを確認しておくといいかなと思う。

     幹事 機会があればそこも書いてもらえればと思う。

    ■世論調査の質問 回答者は理解できる?

     幹事 毎日新聞は20、21両日、全国世論調査を実施。22日朝刊1面は<改憲「自衛隊」盛り込むなら/9条「維持」31% 「2項削除」12%/「明記必要ない」21% 本紙世論調査>との見出しで、憲法改正問題に関する結果を大きく取りあげた。安倍晋三首相が改憲の「責任と実現」を強調している今、時宜にかなった質問ではある。

     しかし、回答者は選択肢の違いをどれだけ理解して回答したのだろうという疑問を持った。1面記事には「日本国憲法第9条」の条文が載っているので、読者はそれを参考にできる。電話世論調査ではオペレーターが口頭で「自衛隊の存在を明記する憲法改正について、あなたの考えは次のどれに近いですか」「(1)憲法9条の1項と2項はそのままにして自衛隊を明記する」「(2)憲法9条の2項を削除して自衛隊を戦力と位置付ける」「(3)自衛隊を憲法に明記する必要はない」「(4)わからない」と読み上げ、回答者はそれを耳で聞くだけだ。突然電話がかかってきて(1)~(3)の違いを認識して、その場で回答するのは難しいような気がする。

     質問文の作成にあたり、どう考慮したのかを聞いておきたい。「わからない」は27%とかなり多かった。この数字は国民の理解が進んでいないことを示しているのだろう。そこを含めて記事を書いたほうがよかったのではないか。

     24日朝刊内政面に<9条改正 各社世論調査/「自衛隊明記」理解進まず/結果ばらつき自民苦慮>という、NHK、読売新聞の世論調査結果と比較した記事が載った。NHKと読売は3択だが、本紙が選択肢に「わからない」を入れたのはよかった。記事は、安倍晋三首相が昨年5月に提起した「憲法9条第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持)を維持したうえで明記する案」について世論の理解は必ずしも進んでいないことを指摘した。読売やNHKの調査の選択肢を見て、安倍首相の改憲案の是非を問う段階は終わったのだろうか、是としてある意味アピールすることに世論調査が寄与しているのはないのだろうか、という印象を持ったが、どうなのだろう。

     本紙世論調査では、「大きな災害や外国からの攻撃で国政選挙ができなくなった場合に、国会議員の任期を特例として延長できる規定を憲法に設けるべきだという意見があります。一方、憲法を改正しなくても、参議院の緊急集会で対応可能だという意見もあります。国会議員の任期延長に関する憲法改正に賛成ですか、反対ですか」という質問もあった。両論併記で誘導を避けたのは分かるが、少し長くないか。

     RDS調査は固定電話だけでなく携帯電話にもかけるようになった。携帯電話にかける場合、複雑な質問、長い質問はより好まれない。その点に対する配慮や苦労があれば知りたい。

     司会 世論調査。

     世論調査室長 時宜にかなった質問であるとの指摘はありがたい。質問を理解できるかとの指摘は、まさに頭を悩ませたところではある。それで最終的に「わからない」を選択肢に入れて、理解が広まっていないことも拾えるようにした。実際に「わからない」という答えが一定数出た。それを記事に書き込むべきではとの指摘はその通りだ。今後どう処理していくかは検討する。どれだけ理解して答えているのかは、世論調査の課題だが、他紙を見てみると、NHKや読売は本紙と同じようなところに問題点を感じていたと思われ、同じような質問をしている。NHKと読売は「わからない」を選択肢に入れていない。一方で、質問を単純化させる趣旨で、朝日や共同通信は憲法9条の改正に「賛成ですか、反対ですか」という単純な質問にしている。世論調査室としては、憲法9条の改正の中身が自民党内で割れているということから9条改正の中身に踏み込んで質問すべきだとは思っている。2月以降の世論調査でどんな質問を作るかは検討しながらやっていきたい。携帯の導入で難しくなったのではとの指摘だが、電話をかけているモニターの感想からは、固定よりも携帯の方が答えやすい部分もあるのかなということだ。調査対象が移動中でなければ、過去3回携帯を含めた調査の実績から言えば、あまり変わらない、むしろ携帯の方が答えやすいのではと感じている。

     幹事 質問は携帯なら長くない方がいいのではないか。

     世論調査室長 やり取りを聞いていると、そこもあまり差がないのかなと感じている。まだ3回しか実施していないので、データを積み上げて考えていきたい。緊急事態条項の部分は長すぎたというのは指摘通りなので、次回以降改善していく。

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