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東日本大震災

福島第1原発事故 原発避難者・東京訴訟 東電に11億円賠償命令 ふるさと喪失分、示さず

判決を受けての記者会見で、ハンカチで目頭を抑える原告の佐藤宏さん=東京・霞が関の司法記者クラブで7日、小川昌宏撮影
小高区原発避難者訴訟の争点
「ふるさと喪失慰謝料」を巡る司法判断

 東京電力福島第1原発事故に伴い、長期の避難生活を強いられたとして、福島県南相馬市小高区(おだかく)の元住民ら321人が東電を相手に「ふるさと喪失慰謝料」など総額約110億円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は7日、請求の一部を認め、東電に総額約11億円の支払いを命じた。水野有子裁判長は「原告は、憲法が保障する居住・移転の自由や人格権を侵害された」と述べた。【近松仁太郎】

     原告側は2014年12月に提訴。1人当たり1000万円のふるさと喪失慰謝料の支払いと、月10万円の「避難生活の慰謝料」を月28万円に増額するよう求めた。

     判決は、原発事故に伴う避難生活について「過去に類を見ない極めて甚大な被害」などと指摘。原告318人について1人当たり330万円の賠償を認定し、残る3人は事故後に生まれたなどとして請求を棄却した。

     原告が主張する二つの慰謝料は「区別が困難」とした。その上で、双方を「包括生活基盤に関する利益の侵害」に対する慰謝料に一括し、「ふるさとを喪失した」との原告の主張に一定の理解を示して賠償対象に含めた。

     また原告側は「避難生活の慰謝料」の賠償期間を、東電が決めた「18年3月まで」から、避難指示解除から3年後の「19年7月まで」に延長するよう求めたが、判決は「二つの慰謝料を分けない以上、原告の主張は採用できない」と退けた。東電広報室は「判決内容を精査し、対応を検討する」とコメントした。

    南相馬の原告「判決疑問」

     総額約11億円の賠償を命じた東京地裁判決を受け、南相馬の原告らは7日夕、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し「小高の実態を把握した上で、血の通った判断をしてくれたのか疑問だ」と納得のいかない表情をみせた。

     判決は、東電に対し1人当たり330万円を支払うよう命じ、同種訴訟の中では高額な賠償を認めた。しかし、訴訟の過程で原告側が裁判官に求めた現地視察は実現せず、認定額は請求額の約10分の1にとどまった。

     原告団長の江井績(えねいいさお)さん(76)は会見で「(現在の小高区は)半数以上が65歳以上の超高齢地域。若者は避難先から戻らず、地元に帰ってきた住民は(事故前の約2割に当たる)2400人にとどまる」と語った。

     そのうえで「歴史、伝統、文化を奪われ、後継ぎとなる若者もいない。働き先となる企業もない。小高が二度と元に戻らない被害をもっと(社会に)知ってほしい」と訴えた。

     また原告側代理人の弘中惇一郎弁護士は「一部勝訴だが、言い換えれば、大部分敗訴。判決は『生活基盤の崩壊』などと言及したが、慰謝料は極めて控えめに評価した。今後検討するが、控訴する可能性が高い」と述べた。【近松仁太郎】


     ■ことば

    ふるさと喪失慰謝料

     原発事故に伴う長期の避難生活で、故郷の人間関係や豊かな自然などを永遠に失ったとして避難者らが求める賠償金。東京電力は2013年12月に国が示した方針に基づき、原発がある福島県大熊町や双葉町など帰還困難区域からの避難者に「故郷喪失に対する慰謝料」として1人700万円支払うとしたが、今回の原告は対象外。千葉地裁が17年に独立した慰謝料として初認定した。

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