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社説

産経新聞の沖縄2紙中傷 報道の本義を再確認する

 産経新聞が沖縄で起きた交通事故の際、「米兵が日本人を救出した」と報じた記事について「事実が確認できなかった」として削除した。

     昨年12月1日、沖縄市で車6台が絡む多重事故が起き、米海兵隊の曹長が横転した車から日本人を救った後、後続車にはねられて重体になった、というのが記事の骨格だ。

     同紙は元日の論説委員長論文でも「美談」として紹介し、米兵に「心から謝意を表したい」と書いた。

     残念ながらメディアは間違えることがある。だからこそ、私たちも他山の石として自戒したい。

     ただし、今回の産経記事が特異なのは、琉球新報と沖縄タイムスの地元2紙が米兵の行動を「黙殺」していると一方的に非難し、インターネット版では「メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」とののしったことだ。

     地元2紙は独自に検証した結果、米海兵隊から「救助行為はしていない」との回答があり、沖縄県警も事実を確認していないと報じた。産経が記事化に際して県警に取材をしていなかったことも分かった。

     8日の産経朝刊によると、記事は米兵の妻の「フェイスブックや米テレビの報道」が端緒だったらしい。基礎的な情報が集まる警察取材を怠ったというのは理解し難い。

     自民党の会合で米軍に批判的な沖縄2紙を「つぶさなあかん」という発言が飛び出したことがある。産経の記事も同様の考え方を背景に、事実関係よりも地元紙攻撃を優先させたようにすら思える。

     ネット空間では虚実があいまいな情報が飛び交う。そこから自分の好む情報だけ選び取るのは報道ではない。メディアが「日本人の恥」などと安易に表現することは、排外的な空気を醸成してしまう。

     産経は1月20日の1面コラムで日本新聞協会が選んだ代表標語「新聞で 見分けるフェイク 知るファクト」を取り上げ、「新聞記事そのものが、今やフェイク視されていることへの自覚が欠落している」と書いた。主張の異なる他紙への批判だったが、今や自らに向いている。

     報道とは正確な事実を把握、発掘し、その事実に基づいて論評することに尽きる。今回の出来事を踏まえ、その本義に立ち返りたい。

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