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紙面審ダイジェスト

松本副内閣相更迭、いろいろ物足りなかった

 紙面審査委員会は、編集編成局から独立した組織で、ベテラン記者5人で構成しています。読者の視点に立ち、ニュースの価値判断の妥当性や記事の正確性、分かりやすさ、見出し、レイアウト、写真の適否、文章表現や用字用語の正確性などを審査します。審査対象は、基本的に東京で発行された最終版を基にしています。指摘する内容は毎週「紙面審査週報」にまとめて社員に公開し、毎週金曜日午後、紙面製作に関わる編集編成局の全部長が集まり約1時間、指摘の内容について議論します。ご紹介するのは、その議論の一部です。

     以下に出てくる「幹事」は、部長会でその週の指摘を担当する紙面審査委員会のメンバーです。「司会」は編集編成局次長です。

    <2月2日>

    ■金融庁の責任は?

     幹事 仮想通貨取引所大手「コインチェック」から1月26日、580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正流出した。今回の問題では、登録審査中の「みなし業者」が、テレビCMを打ちながら顧客を増やすのを見過ごしていた金融庁にも責任があるのではないかと感じた。実際に本紙は28日朝刊3面CUの記事<ずさん管理 次々露呈>で、コインチェックが2017年4月施行の改正資金決済法で義務化された金融庁の登録を済ませておらず、審査中の「みなし業者」だったと指摘。その上で、「顧客拡大を急ぐ姿勢を疑問視する声も業界にあった」と書いている。「みなし業者」が営業できるようにしている金融庁の施策にも問題があるのではないか。

     社内データベースで検索すると、登録審査中の業者が「みなし業者」として営業できることに触れた記事は見当たらなかった。朝日は28日の1面トップ記事で、金融庁について「仮想通貨技術に将来性を認め、登録前でも改善を促しながら営業を認めた。しかし今回は裏目に出た」と指摘。読売は同日1面トップで「金融庁は、流出事件が発覚する前から、同社に対して、こうした顧客の資産管理方法について懸念を示して」いたとある。本紙も29日朝刊1面<海外から不正アクセス/金融庁、改善命令へ>の記事では、「金融庁は、今回の流出以前からコインチェックに懸念を伝えており、安全対策の不備が流出を招いた点を問題視している」と書いた。

     厳しい規制はイノベーションを阻むという考えだったそうだが、金融庁の見通しの甘さを厳しく指摘してもよかったのではないか。

     司会 経済部。

     経済部長 確かに「みなし業者」に対して、なぜやらせたという指摘はその通りだ。一方で、金融庁が登録できていないところにやめろと言えたかというと、仮想通貨の場合は規制が後追いになっていた。ビットフライヤーやコインチェックは既に規模が大きくなっていて、業務停止となるとかなりの混乱が予想される状況だった。窮余の策というか次善策で、「みなし」として認めたという経緯がある。「みなし」は登録できたところと違って、システムとか顧客保護の仕組みが不十分だと金融庁が見ているから、「みなし」ということになった。そういう意味では懸念がその通りになったとも言える。実際に審査の中では「みなし業者」はいくつか登録されずに取り下げられている。金融庁の審査を受けて、あきらめて撤収したところもあった。「みなし」に対して、放置しておいたということではない。金融庁と業者でやり取りはしている。残念ながらコインチェックについてはシステムの不備をつかれて流出が起きてしまった。その点はしっかり規制ができていなかったということで、指摘しておくべきだと思う。同時に金融庁が規制をしたくないというか、イノベーションを阻むから厳しい規制を避けているとの意見を言う人もいるが、実際には今度の主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも議題になるが、特にマネーロンダリングのところでは海外、米国当局も含めて規制を求める動きが広がっている。そこは日本も歩調を合わせている。

     それから利用者保護についても登録審査の中で、きちんと見ていて、登録したところと「みなし」のところとはきちんと分けているし、「みなし」のところは、一部審査の過程でこぼれ落ちていく。どちらかというと、規制をしないというよりは金融庁は規制をしていく方向で、こういう大きな「事件」がない時に、規制をして「やめろ」とは言えない。金融機関の破綻の例を見ても、起きてからでないと金融庁としても動きにくいところがあって、「みなし」という制度が増えてしまった。金融庁の肩を持つわけではないが、現実的にはコインチェックの業務停止は事前にはできなかったのではと思う。コインチェックは、CMが派手に行われていて、一気にお客さんが増えた。少なくとも「みなし」のうちは「CMはやめろ」とぐらいは言えたのではと思っている。今後機会を見て指摘していきたい。

    ■松本副内閣相更迭、いろいろ物足りなかった

     幹事 松本文明副内閣相が更迭された。25日の衆院本会議での代表質問で、沖縄の米軍ヘリの事故問題をただした共産党の志位和夫委員長に対し、自民党席から「それで何人が死んだんだ」とヤジを飛ばし、26日夜、安倍首相に辞表を提出した。

     ヤジにしてもおよそ考えられないほどひどい内容で、しかも現職の副大臣の発言である。本紙は27日朝刊2面3段で<松本副内閣相を更迭/沖縄ヘリ問題でヤジ>と扱ったが、やや物足りなかった。沖縄の反応や辞任の背景、野党のコメント、本人の釈明など、もう少し手厚く報じてほしかった。朝日は27日朝刊対社面3段の扱いだったが、別稿で沖縄の反応や沖縄を巡る過去の問題発言を紹介したほか、2面の[時時刻刻]で「名護市長選への影響を恐れた政権幹部は『背筋が凍った』。安倍晋三首相と菅義偉官房長官は瞬時に更迭を決めたという」と背景にも触れた。東京は27日朝刊1面で報じ、2面で沖縄の怒りの声や野党の反応を紹介した。

     そもそもヤジは25日の衆院本会議でのもの。26日のしんぶん赤旗が<副大臣「何人死んだ」/米軍事故 志位質問に暴言ヤジ>と報じていた。それによると、松本氏は「本会議後、本紙の取材に対し、『僕の発言だ』と認め」たという。しかし、本紙を含む新聞各紙(おそらくテレビも)は26日朝刊、夕刊帯には報じず、松本氏が辞表を提出した段階で初めて記事化したようだ。国会でのヤジは聞き取れないようなものだったのだろうか。それでも、せめて26日夕刊では報じるべきではなかったか。結果的に、事態を重く受け止めて即座に更迭を決めた官邸サイドの動きを、メディアが「後追い」する形になってしまったのは残念だった。

     米軍普天間飛行場の移設問題が争点となる名護市長選の告示が28日に迫る中だからこそ、ちゅうちょせず、しっかりと扱うべきだったのではないか。

     司会 政治部。

     政治部長 前段の指摘はスペースの問題が大きい。この日はニュースが多い中、26日夜になって、野中広務さんの死去が飛び込み、交番席に集まって紙面構成を練り直して、2面の中で記事を書いた。取材自体はできていた。後段の指摘は致し方ない面があるのかなと思う。共産党の志位さんの質問のときに飛んだヤジだが、赤旗の記者は生で聞いていたようで、赤旗には翌日載ったが、それ以外のメディアはほとんど気づかなかったそうだ。非常に小さい声で、テレビで見ていても気づかない程度だったらしい。翌日の共産党の会見を受けて初めて気づいた社もあったということだ。

     幹事 テレビを見ていても気づかないということか?

     政治部長 聞こえないということだ。問題になってからは該当部分のボリュームを大きくしてテレビは流しているが、それでもやっと聞き取れるぐらいだ。われわれは記者会館で聞いているが、それでも聞こえなかったということだ。

     司会 統合デジタル取材センターも追いかけているようだが。

     統合デジタル取材センター編集委員 われわれは第一報を知ることはできないが、報じられたときから速やかに動いて追いかけられなかったかなと反省している。今取材をしていて、ちょうど名護市長選があるので、そこにぶつけた記事と言われたくない。だから、名護市長選明けにこの発言を本格的に考える[アクセス]を出したいと思っている。「死なないと動かないのか」というのは、ある政治評論家に言わせれば、冷酷さにおいて比類がなく、失言の中でも今までのとは悪質さのレベルが違うという声も出ている。これまでも米軍機の事故で、沖縄でも本土でも何人も死んできているので、そうした表を付けたうえで、そういう歴史を知ったうえで言っているのかと指摘する。今回の一連の沖縄のヘリのトラブルもあわや人が死ぬ、というところでもあり、その無神経さも含めて、改めて想像力も欠いているのではないかとしっかりと問題提起をしたい。

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