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華恵の本と私の物語

/19 対岸の彼女

 アキが教室きょうしつそとのベランダで怒鳴どなっていた。

     「うるせー!」

     「きなさい、教室きょうしつはいりなさい」

     先生せんせい必死ひっしになだめる。おとうさんが最近帰さいきんかえってこないのを男子だんしにからかわれ、キレたのだ。先生せんせいは、そのよりアキをしかった。それでもちゃんと抗議こうぎしたアキ。かっこいい。

     そのあとすぐわたしはアキと仲良なかよくなった。ときどきまわりからいた行動こうどうをするところとか、わたしたちはよくていた。

     そのアキと、べつ中学ちゅうがくくことになった。卒業そつぎょうまでのこされた時間じかんを、できるだけいっしょにごしたい。

     2がつわり、わたしは携帯けいたいってもらうと、さっそくアキとメアドを交換こうかんした。

     <ハナエだよ。とどいてる?>

     <とどいたよ。はじめてのメールだね>

     すぐちかくにいるみたい。

     <アキ、宿題しゅくだいやった?>

     <おかあさんに、メールしすぎないでってわれちゃった。アキもわれる?>

     <アキ、わたしはお風呂ふろからあがったよ。いまなにしてる?>

     脱衣所だついじょでパジャマをながら、返事へんじつ。リビングへってバナナをべるときも、左手ひだりて携帯けいたいにぎっていた。ベッドにはいると、やっとメールがきた。

     <ごめん、おねえちゃんとはなしてた。てか、ハナエきすぎ。いつかないよわらい

     ヒヤリとした。

     わたし、アキがいないとダメなひとみたい。

     <ごめんね、しつこくて>といてしばらくながめてから<あしたね。おやすみ>となおして送信そうしんした。

      + + + + 

     「対岸たいがん彼女かのじょ」をむと、あのときのことをおもします。

     「ナナコといっしょだとなんでもできるようながする」とうくらいあおいはいつでもあかるいナナコが大好だいすきでした。あるあおいはナナコのめられたこころきずります。ふたりのつながりはそれまでよりもつよくなり、なつやすみにあおいはナナコにさそわれて家出いえでをします。それはやがて、かえしのつかない事件じけん発展はってんするのです。

     まわりのひとからは理解りかいされませんでした。でも、わたしには彼女かのじょたちの特別とくべつなかすこしわかるようながするのです。

     アキに<いつかないよ>とわれてからいままで、わたしには「親友しんゆう」とべる存在そんざいはできませんでした。ひと距離きょりをつめすぎないように、をつけてきたのかもしれません。

     アキとはいまでもねんに1かいう、いい友達ともだちです。

     「心配しんぱいしなくていいんだよ。ながつづ友情ゆうじょうもあるのだから」。小学生しょうがくせい自分じぶんに、いまのわたしならってやれるのにとおもうのです。


    対岸たいがん彼女かのじょ

     角田光代かくたみつよちょ

     文春文庫ぶんしゅんぶんこ 637えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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