メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

 アキが教室きょうしつそとのベランダで怒鳴どなっていた。

     「うるせー!」

     「きなさい、教室きょうしつはいりなさい」

     先生せんせい必死ひっしになだめる。おとうさんが最近帰さいきんかえってこないのを男子だんしにからかわれ、キレたのだ。先生せんせいは、そのよりアキをしかった。それでもちゃんと抗議こうぎしたアキ。かっこいい。

     そのあとすぐわたしはアキと仲良なかよくなった。ときどきまわりからいた行動こうどうをするところとか、わたしたちはよくていた。

     そのアキと、べつ中学ちゅうがくくことになった。卒業そつぎょうまでのこされた時間じかんを、できるだけいっしょにごしたい。

     2がつわり、わたしは携帯けいたいってもらうと、さっそくアキとメアドを交換こうかんした。

     <ハナエだよ。とどいてる?>

     <とどいたよ。はじめてのメールだね>

     すぐちかくにいるみたい。

     <アキ、宿題しゅくだいやった?>

     <おかあさんに、メールしすぎないでってわれちゃった。アキもわれる?>

     <アキ、わたしはお風呂ふろからあがったよ。いまなにしてる?>

     脱衣所だついじょでパジャマをながら、返事へんじつ。リビングへってバナナをべるときも、左手ひだりて携帯けいたいにぎっていた。ベッドにはいると、やっとメールがきた。

     <ごめん、おねえちゃんとはなしてた。てか、ハナエきすぎ。いつかないよわらい

     ヒヤリとした。

     わたし、アキがいないとダメなひとみたい。

     <ごめんね、しつこくて>といてしばらくながめてから<あしたね。おやすみ>となおして送信そうしんした。

      + + + + 

     「対岸たいがん彼女かのじょ」をむと、あのときのことをおもします。

     「ナナコといっしょだとなんでもできるようながする」とうくらいあおいはいつでもあかるいナナコが大好だいすきでした。あるあおいはナナコのめられたこころきずります。ふたりのつながりはそれまでよりもつよくなり、なつやすみにあおいはナナコにさそわれて家出いえでをします。それはやがて、かえしのつかない事件じけん発展はってんするのです。

     まわりのひとからは理解りかいされませんでした。でも、わたしには彼女かのじょたちの特別とくべつなかすこしわかるようながするのです。

     アキに<いつかないよ>とわれてからいままで、わたしには「親友しんゆう」とべる存在そんざいはできませんでした。ひと距離きょりをつめすぎないように、をつけてきたのかもしれません。

     アキとはいまでもねんに1かいう、いい友達ともだちです。

     「心配しんぱいしなくていいんだよ。ながつづ友情ゆうじょうもあるのだから」。小学生しょうがくせい自分じぶんに、いまのわたしならってやれるのにとおもうのです。


    対岸たいがん彼女かのじょ

     角田光代かくたみつよちょ

     文春文庫ぶんしゅんぶんこ 637えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 今日から俺は!! “敵役”に城田優、中村倫也、須賀健太ら メインゲスト11人を一挙発表 
    2. 女の気持ち 定年を前に 埼玉県日高市・井上しず江(大学職員・64歳)
    3. 会津藩公行列 「ありがとなし…」綾瀬はるかさん手を振り
    4. 警察庁 40代女性警視がセクハラ被害 公務災害に認定
    5. 最年少町長3カ月 2児の母過疎地で奮闘「めげない」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです