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イスラエル

アフリカ移民を追放 政府方針 「建国理念に反する」の声

「イスラエルで拘置されることも辞さない」と語るエリトリア人のベルハネ・ナガシさん(右)と、ホロコースト生存者のベロニカ・コウヘンさん=エルサレム市内で2018年1月29日、高橋宗男撮影
イスラエルによる亡命申請者退去案

 イスラエル政府がアフリカからの亡命希望者の国外退去方針を示し、ホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺)の生存者らが反対している。イスラエルは迫害されたユダヤ人の安住の地として建国された経緯があるからだ。世論調査では国民の約3分の2が退去支持だが、「建国の理念に反する」との声も根強い。【エルサレム高橋宗男】

     「不法移民を滞在させる義務はない。第三国に送る」。イスラエルのネタニヤフ首相は1月28日の定例閣議でこう述べた。首相はアフリカからの亡命希望者らを「侵入者」と呼ぶ。より良い経済状況を求め違法入国した「経済移民」とみなし、保護が必要な「難民」とは認めない。

     内務省によると、アフリカ出身の成人亡命希望者は約3万8000人。独裁体制下のエリトリアからが7割、強権政治が続くスーダンからが2割だ。

     政府方針では、亡命希望者のうち2万人の独身男性に国外退去か無期限拘置を選ばせる。退去を望めば航空運賃を負担し3500ドル(約37万円)を支給。方針通知は今月3日に始まり、2カ月以内に判断する必要がある。

     イスラエルは国連難民条約に加盟し、亡命希望者を生命の危険がある本国には送還できない。このため「アフリカの第三国」に退去させる計画だが、受け入れ先として地元メディアは「ルワンダかウガンダ」と報道。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、イスラエル政府はこれまでも航空運賃の負担をすることで移民の自発的出国を促しており、ルワンダ、ウガンダ両国には2013~17年で、すでに約4000人が移動したとみられる。UNHCRは新退去制度に懸念を表明。自発的出国をした移民も安全ではなく、イスラエルは難民や保護が必要な人々を守る国際的義務があると指摘する。

     「ルワンダに送られるぐらいならイスラエルでの拘置生活を選ぶ」。エリトリア人のベルハネ・ナガシさん(32)は言う。恣意(しい)的な逮捕や処刑が横行する母国を02年に離れた。スーダン、リビア、エジプト経由でイスラエルにたどり着いたのは06年。「密入国業者の指示に従っただけ」。移動中に命を落とした仲間もいる。エルサレムで料理人として働くが「白人移民も多いのにアフリカ人ばかり問題視される」と言う。

     独立系研究機関「イスラエル民主主義研究所」が今月発表した世論調査によると、退去方針を「強く支持する」「支持する」回答は合計66%に達した。

     だが、ホロコーストの生存者36人は1月、国外退去中止の嘆願書を政府に提出。その一人でエルサレムに住むハイム・ロットさん(85)は「歴史から学ぶべきだ」と強調する。11歳の時にオランダでキリスト教徒にかくまわれ生き延びたロットさんは「世界中の人たちに迫害が起きてはいけない」と訴える。

     ベロニカ・コウヘンさん(73)は「ホロコーストの生存者というより、人間として反対する。私たちの支持者は多い」と話す。作家や学者、医者らも政府を批判し、「国外退去の航空機の操縦を拒否する」と言うパイロットも出ている。

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