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紙面審ダイジェスト

選挙候補者の社会面の呼称は「さん」でいいか

 紙面審査委員会は、編集編成局から独立した組織で、ベテラン記者5人で構成しています。読者の視点に立ち、ニュースの価値判断の妥当性や記事の正確性、分かりやすさ、見出し、レイアウト、写真の適否、文章表現や用字用語の正確性などを審査します。審査対象は、基本的に東京で発行された最終版を基にしています。指摘する内容は毎週「紙面審査週報」にまとめて社員に公開し、毎週金曜日午後、紙面製作に関わる編集編成局の全部長が集まり約1時間、指摘の内容について議論します。ご紹介するのは、その議論の一部です。

     以下に出てくる「幹事」は、部長会でその週の指摘を担当する紙面審査委員会のメンバーです。「司会」は編集編成局次長です。

    <2月9日>

    ■「無届け老人ホーム」「業過致死容疑」がないのは

    1月31日午後11時40分ごろ、札幌市の自立支援関連施設から出火し、木造モルタル一部3階建て400平方メートルが全焼、入居者16人のうち11人が死亡した。

     幹事 本紙2月2日朝刊1面のニュースは<札幌 調理場周辺 火元か>ということで、前文で「北海道警と消防庁は1日午後、焼け跡の現場検証を始めた。部屋や調理場がある1階中央付近が激しく燃えており、火元の可能性がある」と書いた。

     朝日1面は<11人死亡 防火体制捜査へ/札幌の共同住宅 業過致死容疑視野>。「北海道警は防火管理の体制に問題がなかったか、業務上過失致死容疑なども視野に捜査を進める」と報じた。

     読売1面は<無届け老人ホームか/11人死亡火災/共同住宅 札幌市 実態調査へ>。当該施設の「そしあるハイム」が、自治体への届け出が義務化されている有料老人ホームであるにもかかわらず無届けのホームに当たる可能性が高いとみて、札幌市が調査に乗り出すという。東京1面、産経1面も無届け老人ホームの可能性に言及していた。

     上記のような点について本紙が報じていなかったのは残念だ。もう少し突っ込んで市役所や道警を取材してほしかった。

     一方、5日夕刊社会面の<系列施設の灯油保管/近隣住民「物置に50~60個」/札幌11人死亡火災>は他社に先駆けてよかった。航空写真の大量のポリタンクにも驚いた。

     司会 地方部。

     地方部長 北海道の原稿については、北海道報道部のデスクが見た後に、東京地方部に届き、地方部デスクが出稿する形だ。この施設が有料老人ホームか、無料低額宿泊所かはまだ決まっているわけではない。あいまいだ。もし無届けホームであれば、スプリンクラーの設置を義務付けられるなど管理の問題が出てくるので、業務上過失致死に問えるのではないかという論法になる。ただ、これは現在もはっきりしないので、慎重に扱った。札幌市も「こうだ」とはっきり言えない状況であいまいだ。業務上過失致死の問題は、その建物がどういう種類の建物かと言えないために、すぐには書けなかったようだ。指摘の最後にあるように、灯油のポリタンクがいっぱい置いてあったというのは完全に管理がおかしい。また、3日朝刊で居住窓に鉄格子があって避難しづらい状況にあったことを書いたが、その段階から業務上過失致死を視野にと書いた。他紙は早く書いているが、その段階では根拠があいまいだったのではと思う。

     幹事 業務上過失致死についてはわかったが、無届けホームかどうかを調べるという記事は出せなかったか。

     地方部長 それはあった方がよかった。しかし、調べているがまだ断定できない状況だ。

    ■選挙候補者の社会面の呼称は「さん」でいいか

     幹事 沖縄県名護市長選を報じた5日夕刊で、やや違和感を持ったことを指摘したい。それは候補者の呼称だ。1面本記は「渡具知武豊氏」として「○○氏」と書いているのに、社会面では「渡具知武豊さん」と「○○さん」となっている。他紙はすべて1面も社会面も区別なく、「渡具知武豊氏」と「○○氏」表記だ。なぜだろう。1980年代後半のころは他紙も本紙のような使い分けをしていたのではないかという記憶がある。社会面は「○○氏」とすると「硬い」から、社会面らしく「○○さん」とすることにしようという取り決めでもあったのだろうか。最近では、2014年3月の大阪市長選で橋下徹氏が当選した際の紙面でも、1面が「氏」なのに社会面で「さん」としたのが本紙だけだったことに違和感を持った記憶がある。ちなみに昨年10月24日朝刊の衆院選投開票記事では、社会面も「○○氏」だった。

     紙面審の議論では、「選挙報道だけこうした使い分けをするのはおかしい」「取材相手から『さん』で書かれると、軽くみられるから『氏』にしてほしいと要求された」「政治家や候補者だけ『氏』と付けるのはいかがか。本記も『さん』でいい」「以前は訃報記事ではほぼ『氏』だったが、本紙がいち早く『さん』にした。本記も『さん』でいいのでは」と議論百出だった。いずれにしても本紙だけがこうした表記を続けるなら、何らかの合意があった方がいいようにも思う。あるいは、この際他紙に合わせて「○○氏」で統一するとの判断もあるだろう。どう考えたらいいだろう。

     司会 まずは、出稿元の西部報道について、社会部。

     社会部副部長 去年の衆院選、一昨年の参院選では社会面も1面本記同様に「氏」を使っている。これについては、社会部、地方部で統一しようと話して決めた。西部報道はその前の14年衆院選、13年参院選も参考にしたが、その際社会面は「さん」だったそうだ。今回は軟派は「さん」がしっくりくるのではと「さん」にした。当日特に異論は出なかったそうだが、選挙の度に議論になるので、統一した方がいいのではとの回答だ。選挙報道の社会面呼称は毎回悩むが、何となく最近は「氏」で合意されつつあるのかなと感じていた。しかし、今回、西部報道はそういう判断をした。他本社でも考え方が違うところもあるが、全体としては「氏」に向かいつつあるのかなと思っている。

     幹事 「さん」に親しみを込めると見る人もいるし、「氏」は尊敬の度合いが高いと考える人もいる。

     司会 では政治部。

     政治部長 政治部の意見は「氏」に統一した方がいいだろうということだ。選挙本部の編集委員の意見を聞いてきたが、政治部と一緒で、同じ新聞で割れているのはおかしいので、「氏」で統一するのはいいだろうということだったが、編集委員個人の意見としては、「さん」に統一するのもありではないかと。紙面審の指摘で、訃報について、以前は「氏」だったが、本紙はいち早く「さん」に統一したとあるが、最初は違和感があったかもしれないが、今では慣れて1面記事も含めて「さん」で特に違和感もない。全く個人的意見だが、「さん」で統一もありうるのではということだった。いずれにしても統一した方がいい。

     司会 校閲はどうか。

     情報編成総センター編集部長(校閲) 呼称に関して16年に出した社内通達がある。結論から言うとはっきりしないが、内容を読みあげる。人名には原則として敬称、呼称を付ける。敬称は通常、「さん」「氏」「ちゃん」などを使う。1面や政治、経済、国際面の記事は主として「氏」を、それ以外の記事は「さん」を原則とするが、必要に応じてどちらも使ってよい。また、肩書による呼称を使ってもよい、という内容だ。肩書呼称が使える場合なら、それが無難だろうが、選挙に落ちるとそうもいかないので、社会面で「さん」を使うのはその方が軟らかいということだと思う。先ほど読み上げた通達は、選挙を想定したものではないと思うが、社会面記事で候補者を「氏」とした場合、周辺の人、家族や街の人の声を扱う時は「さん」とせざるをえないから、同じ記事で不整合が生じる恐れはある。しかし、公人を「氏」で扱い、一般の人を「さん」で使い分けるというのも、判断としてありうると思っている。つまり、選挙に関わる人は「氏」で統一してもよいのではと私個人は思う。

     司会 逆に言えば、統一しなくてもいいということか。

     情報編成総センター編集部長(校閲) まあ、そうだが。

    司会 運動部長はどう考えるか。

     運動部長 運動部では、選手は全部呼び捨てにして、社会面も呼び捨てで、同じ記事に一般の人が出てくれば「さん」でとなっている。一つの記事中に、呼称の違いが出てくるのもありかなと思う。選挙に関しては、候補者は落ちていても、準公人的扱いと考えれば、「氏」で統一すべきではないか。周囲の人などを「さん」で表記して、候補者は「氏」で統一するのがわかりやすい。

     司会 夕刊編集部。

     夕刊編集部長 1面などの選挙本記を除けば、両方使えるようにしてもらった方がいい。夕刊編集部の取材では、杯を傾けつつ戦いを振り返ってもらったという記事を書く場合、「氏」というのもどうか。やはり「さん」だろう。無理に統一しなくても。

     幹事 それは夕刊編集部の原稿の話だ。選挙の度に、「氏」「さん」について話し合うのは時間がもったいないので、原則的に決めてもいいのかなと思う。

     司会 校閲を中心に検討してほしい。

     情報編成総センター編集部長(校閲) 結論が出るかどうかわからないが相談したい。

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