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幸せの学び

<その189> 実習生と教え子=城島徹

41年ぶりに再会した吉成さん(左)と石井さん

 教育実習として教室で向き合った児童との41年ぶりの再会を伝える寒中見舞いが元小学校長の知人から届いた。笑顔で並ぶ写真に触発され、師弟それぞれに話を聞いてみた。

     「もしかして文京区立元町小で教育実習したことありますか?」。昨年4月28日、同区教委主催の「PTA広報紙づくり研修会」。講師を務めた元小学校長の吉成勝好さん(74)は受講者の中年男性に声を掛けられた。「エッ、ありますよ」。そう答えると、男性は感激した面持ちで言った。「やっぱり。あの時お世話になった4年B組の石井渉(わたる)です」

     「今から41年前のたった4週間。しかも当時10歳だった子が覚えていてくれたとは」。吉成さんを驚かせた石井さんは現在52歳。設計事務所に勤め、長女が通う同区立第三中のPTA会長だ。区報で研修会講師が「吉成」とあるのを見て「もしや」と思ったという。

     吉成さんは当時31歳。若くはない実習生だった。1962年に入った早稲田大学では学生運動のあおりで1年間授業がなく卒業式もなかった。ゼミの教授に誘われ在学中から5年間、中国専門の研究機関で働いたが、文化大革命で学者らが分裂するなか退職した。

     失業手当を受けながら職業訓練校で1年間、機械工の訓練をして町工場に就職し旋盤工として働いた。「創造の喜びを知った」5年間で、機械工の2級技能士と指導員の資格も得た。集団就職の中卒者らと同じ釜の飯を食い、「学校教育とは何か」も考えた。

     そんな折、川崎市の小学1年生の担任教師、村田栄一さんが発行した学級通信をまとめた「学級通信ガリバー」を読んで教職にあこがれ、通信教育で教員免許を取得した。75年の晩秋、教育実習を始める時点では教師になることに迷いもあった。それを消したのが「天真らんまんで素直な子どもたち」だった。教育実習日誌の終わりに吉成さんはこう書いた。

     《迷いの梅雨は晴れ決心はついた。こんな未熟な私に対してさえ「先生、私は先生が大好きです」「きっといい先生になって下さい!」「先生になったらぜひ元町小に来て下さい!」と言ってくれる子どもたちを前に、何を逡巡(しゅんじゅん)することがあろうか。十年の回り道が無駄であったとは思わない。その人生の経験を生かしつつ、教育を一生の仕事として、謙虚に一からやり直してみよう》

     教師となった吉成さんは学級新聞づくりに取り組み、全国新聞教育研究協議会の会長や日本新聞協会のNIEコーディネーターを務めた。石井さんは「子ども心に吉成先生の授業は楽しかった。教師が天職だったのでしょう」と再会に感無量だ。【城島徹】

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