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今どきサイエンス

ウナギの婚活の行方=鴨志田公男

 ニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)漁が、今漁期は記録的な不漁だという。

     市場に流通するウナギの大半は、稚魚を捕獲して、養殖したものだ。だから、稚魚の不漁は、ウナギの市場への供給量不足に直結する。

     日本養鰻(ようまん)漁業協同組合連合会(日鰻連)の白石嘉男会長は「5年前の不漁よりさらに悪い」と気をもんでいる。

     国際自然保護連合(IUCN)は2014年、ニホンウナギを絶滅危惧1B類に指定した。乱獲や生息域の減少が背景にある。不漁は、ウナギの個体数が一層減ったと考えるのが普通だろう。

     だが、水産庁の担当者は「これほど急激に個体数が減るとは考えにくい。海流などの影響ではないか」と話す。

     ニホンウナギは太平洋のマリアナ諸島付近で産卵する。ふ化した稚魚は海流に運ばれ東アジア沿岸に来遊する。海流が変化すれば、その数に影響が出ることは分かるが、今期との関係は不明だ。

     では、個体数が急減することはないのか。海部健三・中央大准教授(保全生態学)は「あり得る」との立場だ。

     個体数が減ると、産卵場所でオスとメスが出合う確率が下がり、「ウナギの婚活難」が生じる。また、ウナギが群れを作って産卵場所に向かう場合は、個体数が減ると群れを作りにくく、天敵に襲われやすくなる可能性もある。

     こうした負の効果が重なって、指数関数的にニホンウナギの数が減少するシナリオだって考えられるというのだ。

     日本、中国、韓国、台湾は15年漁期から、養殖池へ入れるシラスウナギの量に上限枠を設定した。だが、各国・地域の池入れ量の総計は上限枠の5~6割程度にとどまる。枠が緩すぎ、事実上の取り放題になっている。

     上限枠は14年の実績の8割に設定されたが、あくまで政治判断であり、科学的な根拠はない。15年からの制限を見越した養殖業者が、実績を水増しするため14年の池入れ量を過大報告したという疑惑も一部で報道された。

     海部さんは漁期ごとに、国内の養殖池に入れられたシラスウナギの量と養殖ウナギ生産量を比較してみた。近年では、池入れ量に対する当年と翌年の平均生産量の比率が14年は大きく落ち込んでいた。

     水産庁や日鰻連は「多くの業者はまじめに取り組んでいる。養殖池に稚魚を多く入れると歩留まりは落ちる」と説明する。だとしても、上限枠の引き下げを急ぐべきだ。

     「アイヌはその年の自然の利子の一部で全部やってきた。今の人間は自然という元本に手をつけている。元本に手をつけたら利子が減ることをなぜ分からないのか」

     アイヌの故萱野茂さんは北海道在住の脚本家、倉本聰さんにそう語ったという。ウナギの元本はどれだけ残っているのだろう。(論説委員)=次回は3月22日

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