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社説

仮想通貨をどうすべきか 本質論抜きの規制は誤る

 「通貨」という単語を含むため、円やドルといったお金の空気をまとっている。だが、その前に「仮想」とあり、何なのか理解しづらい。

     マンションや貴金属、有名絵画のように目で値打ちを確かめることもできない。仮想通貨とは、暗号化されたデータに過ぎないからだ。

     しかしその市場価値が数カ月で何十倍にも膨らんだとあって、もうけを狙う人々が群がった。ビットコインの誕生から9年。投機が先行する一方で、国や国際社会はつきあい方に苦慮している。そんな中で、仮想通貨の一種、NEM(ネム)の大量盗難事件が発生した。

     不正アクセスを受けた交換業者、コインチェックの管理体制が甘かったことは明らかだ。しかし、こうしたずさんな事業者が顧客基盤を拡大し、業界の主力プレーヤーにのし上がることができた背景にこそ、目を向ける必要がある。

    「みなし業者」の抜け穴

     国内では、2017年4月に改正資金決済法が施行され、金融庁に登録した業者のみ、仮想通貨の取り扱いができることになった。免許制より緩い登録制を採用したのは、世界で日本が初だ。しかも規制には、大きな抜け穴があった。

     盗難に見舞われたコインチェックは、登録の手続きが完了しない未登録状態にある。にもかかわらず、合法的に業務を続けられた。制度開始前から交換業を営み、登録の申請が済んでいれば、「みなし事業者」として営業できる特例のお陰だ。同様の事業者は15社にのぼる。

     なぜこうした制度になったのか。

     制度の元となる報告書を、金融庁の有識者会議(決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ)がまとめている。

     原案ができる前に、2人の参考人から意見聴取をしていた。いずれも仮想通貨交換業界の代表で「免許制は厳し過ぎるが、届け出制は物足りないので」と述べ、中間の登録制を要望した。間もなく登録制を盛り込んだ報告書がまとまった。

     その1年半前には、自民党の委員会が仮想通貨に関する中間報告を作成していた。仮想通貨を「新たなイノベーションを起こす大きな要素」と位置付け、「利用者の自己責任」「既存の規制で縛りつけることをできるだけ避ける」と書いている。

     業界の成長促進という産業政策的発想が、みなし事業者を認めたことも含め、規制の議論で貫かれた。

     日本は、インターネットやフィンテックと呼ばれる金融技術分野で世界に後れをとった。盛り返しを図る上で仮想通貨は格好の武器と映ったのだろう。緩やかな規制が拙速にこしらえられた感が否めない。

     一方、国外では、政府や中央銀行、国際機関などから仮想通貨の根源的な問題や規制について、さまざまな議論が交わされている。

    通貨の要件満たさず

     「バブルであり詐欺であり環境破壊だ」。そう一蹴したのは「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる国際決済銀行(BIS)のカルステンス総支配人だ。環境破壊というのは、通貨創出に大量の電力消費を伴うコンピューター使用が必要だからである。

     現実の通貨と「交換」という接点がある以上、中央銀行の厳格な関与を求めている。

     英国のメイ首相は、犯罪組織などによる資金洗浄への懸念から、真剣に行動を起こす必要性を唱える。

     短期間に値打ちが倍になったり半減したりする仮想通貨は、そもそも経済的価値の保存手段となり得ず、「通貨」の要件を満たさないというのが、BISのカルステンス氏を含む経済の専門家の見方だ。

     何より、仮想通貨には国、中央銀行のような後ろ盾がない。例えば1万円札は、日銀が保有する同価値の資産(国債や株式など)に裏打ちされている。また、金融危機のように市場から資金の出し手が引き揚げる事態となれば、中央銀行が資金を供給し不安解消の責任を担う。

     そうした性質を持たない仮想通貨が存在感を増せば、銀行や法定通貨、さらに国家というものにどのような影響を及ぼし得るのか。本質的な議論があまりにも乏しかった。

     仮想通貨の規制は、来月、アルゼンチンで開かれる主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で、主要議題に上る見通しだ。国境を超えた対応が急務となっている。グローバルな議論に備える上でも、まず国内で、仮想通貨との関わり方を一から問い直す必要がある。

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