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今週の本棚

荒川洋治・評 『単純な生活』=阿部昭・著

 (小学館・702円)

身近な情景と事物への視線

 ひとりの人間が、ふだん通りの日を過ごす。素材もつくりも単純なのに、特別な光を放つ小説である。

 阿部昭(一九三四-一九八九)は広島生まれ。一歳のとき湘南・藤沢へ移り、終生同地で暮らす。元海軍大佐の父とその家族を描く『司令の休暇』(一九七一)、短編集『千年』(一九七三・毎日出版文化賞)、『人生の一日』(一九七六)など幾多の傑作を残し、平成元年、五四歳で亡くなった。全集に『阿部昭集』全一四巻(岩波書店)。

 この『単純な生活』は一九八〇年から二年半『婦人之友』に連載、一九八二年、四七歳のとき刊行された。全…

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