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社説

裁量労働制が問うもの 実態に応じた区分が必要

 裁量労働制が今国会の焦点となっている。問題の本質はどこにあるのだろうか。

     国会論議では厚生労働省の調査結果で不自然なデータが存在していることに多くの時間が費やされている。厚労省のずさんなデータ処理は年金記録でも露呈しており、その無責任さには改めてあきれる。

     ただ、裁量労働制には私たちの働き方や暮らし方をめぐる重要な問題が内包されている。その議論を丁寧に深めていかねばならない。

     裁量労働とは、実際の労働時間に関係なく、労働者と使用者が定めた「みなし時間」だけ働いたことにして賃金を支払う制度だ。デザイナーやメディア関係などの「専門業務型」、企業活動の企画・立案や調査を行う「企画業務型」がある。

     今回の政府案では情報システム関連企業で法人顧客向けの企画立案、工作機械メーカーで品質管理の立案などをする人が「企画業務型」の対象に追加される。

     ITやロボットによる省力化で単純労働が減り、ホワイトカラーの中でも専門業務や企画業務が増している。働いた時間で賃金を決めるのが合わない仕事は今後も増える。

     自分の好きな時間と場所で自分のやりやすいように働くことを求める人も増えている。家族の介護や育児をしながら働いている人、病気や障害があっても働く意欲のある人には、多様な働き方が認められる裁量労働はメリットがある。

     ただ、注意しないといけないのは、企業が残業代を削るために、本来適用対象ではない社員にまで裁量労働の枠を広げてしまうことだ。

     実際、ゲーム開発やデザイン関係の業界で、裁量労働制を適用された若い社員が残業代なしの長時間労働を強いられる例が相次いでいる。

     裁量労働制は、働く側に必要な知識や経験があり、残業代なしでも十分な賃金が保証されなければならない。現在は賃金やキャリア、勤続年数に関する規定がないが、勤務実態に応じた厳密な区分が必要だ。

     労組と経営側で構成される労使委員会が具体的な対象者や「みなし労働時間」について決めることになっている。健康確保策も同委員会に委ねられるが、どこまでチェック機能が働くかは疑問だ。

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