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余録

「東には緑濃きグータが視界の限りに広がり…

 「東には緑濃きグータが視界の限りに広がり、汝(なんじ)がその四方に見る所すべてに房々と茂る緑の樹々が連なる。もしこの世に楽園があるならば、まさしくダマスカスがそうだ」▲ダマスカスをたたえる12世紀の旅行家、イブン・ジュバイルの言葉だ。グータとは乾燥地帯で奇跡のような広大な緑地をなすグータオアシスである。そこは古くから「エデンの園」になぞらえられ、ダマスカスを楽園都市としてきた▲だがその「グータ」という地名をこのところしきりに耳にするのは、「この世の地獄」という形容を伴ってのことだ。シリアのアサド政権が続けるダマスカス近郊の東グータ地区に対する攻撃で、住民の犠牲者が依然増え続けている▲反体制勢力の拠点となってきた同地区では40万人の住民が政府軍の包囲下にある。過激派組織「イスラム国」(IS)の壊滅で政権の矛先はこの地区に向けられ、先日からの攻勢では百数十人の子どもを含む600人近い死者が出た▲増える犠牲に国連安保理は30日の停戦を決議したが、過激派は停戦の対象外だとして攻撃は続く。政府軍を支援するロシアが自軍に1日5時間の戦闘中止を命じたのも国際的非難をかわす小細工と見られ、停戦は有名無実化している▲露、米、トルコ、イラン、イスラエルなどの各国のエゴが入り組み、和平への道筋がさらに見えなくなったシリア内戦である。この世の楽園を地獄に変えた愚行の連鎖が、中東全域、いや世界全体をのみ込むのを真に恐れるべき人道危機だ。

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