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社説

裁量労働拡大を今国会断念 元々「一括」が無理だった

 遅すぎた決断と言うべきだろう。

     安倍晋三首相が働き方改革関連法案のうち、裁量労働制の対象拡大部分を削除する方針を決めた。

     この部分は今国会での成立を断念したということだ。裁量労働に関する厚生労働省の調査に異常データが次々と見つかり、このまま押し切るのは困難と判断したのだろう。

     ただしこれで一件落着ではない。

     この問題は、首相が1月末の国会で、野党の懸念に反論するため「裁量労働制で働く人の労働時間は一般労働者より短いというデータもある」と自ら持ち出したのが始まりだ。

     首相は再度実態を調査し、裁量労働制部分は今国会後、改めて提出する意向だという。しかし、まず必要なのは、なぜずさんな調査となったかの検証だ。厚労省が言うように単なるミスだったのか。「裁量労働制は長時間労働につながらない」という結論を導き出す意図が最初からあったのか。公正さという政治の根幹に関わる疑問は消えていない。

     首相は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル(高プロ)」制度の創設は外さず、残業時間規制などと抱き合わせにした法案を今国会に提出する考えを変えていない。

     「高プロ」は裁量労働制と同様、経営者側の長年の要望を受けた制度で、首相は従来、これらを一体として改革することが「企業の生産性向上につながる」と力説してきた。

     だが、そもそも経営者側が求める規制緩和と、労働者側の視点に立った残業規制を抱き合わせて一括法案にすること自体に無理がある。今回はその矛盾が表れただけである。

     一括法案に野党が反対すれば「野党は残業規制にも反対した」とアピールできる。そんな狙いもあるはずだ。やはり、一つ一つ法案を切り離し国会で丁寧に検討すべきだ。

     この問題には自民党からも批判が続出していた。秋の党総裁選で3選を目指す首相には総裁選への影響を避ける政治的思惑もうかがえる。

     首相が削除を表明したのは新年度予算案が衆院を通過し、年度内の成立が確実になった直後だ。国会はこの1カ月、データ問題に集中した。もっと早く決断していれば、北朝鮮問題など他の課題にも審議時間を割けたはずだ。その責任も大きい。

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