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チンドン繁盛記

昭和外伝/6 楽士・中沢寅雄の手記(1) 丁稚奉公、転々と /東京

 「恥と義理と人情はかきなれているが、文字は書けない、笑われるのを覚悟で書く」

 中沢寅雄(1914年生まれ、故人)の手記は、そんな謙遜の言葉で始まっている。昭和初期から楽士として活躍した中沢はとてもきちょうめんで筆まめだったので、付き合いのあるチンドン屋の名簿を作成し、エピソードをつづり、また譜面も独学で書き起こし、惜しまず若い楽士に与えてチンドンの定番曲を伝えた。さらに自らの体験を記したノート2冊が残っている。ご遺族のご厚意で手にすることができたが、これは草創期のチンドン屋が自ら書いた、多分唯一の貴重な記録である(*注)。

 中沢は父母と彼以外は女ばかりの5人きょうだいで、物心つく5歳頃には、父は埼玉県・入間川の製糸工場に…

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