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我らが少女A

/216 第6章 24=高村薫 多田和博・挿画監修

 忍は軽い過呼吸を起こして浅く浅く息をしながら、しばし自分や母や父を罵倒し続ける。母親といっても、物心ついたころから入退院を繰り返し、自分と同じ精神障害者保健福祉手帳を持っている何者かと言ったほうが正しい。しかも、向こうは自分より重い二級で、料理は下手だし、掃除や洗濯はしないのだ。そんなふうだから母親という感じはもったことがないし、もとよりいてもいなくても気にもならない。正確に言えば、そんな母親の入院がこころにこたえたはずはない一方で、世界のなかの母の居場所が変わったことと、実家の鍵が開かなかったことが自分の正気を失わせたのだということを、忍はゆっくりと自分に確認する。あわてることはない。お袋の頭はどのみちぶっ壊れているのだから悲しくもない。忍、分かったか。大丈夫だ、世界の大枠は何も変わっていない。

 それより、俺は何をしに来たのだった? そう、ケータイを探しに来たのだ。ケータイを取り戻して、何をす…

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