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対在特会ヘイト裁判

李信恵さん 尊厳回復の闘い

高裁判決後、支援者から花束を贈られ笑顔の李信恵さん=大阪市北区で2017年6月19日、後藤由耶撮影

 「人種差別的な発言で名誉を傷つけられた」として在日朝鮮人のフリーライター、李信恵(リ・シネ)さん(46)が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と同会の桜井誠前会長を訴えた損害賠償訴訟は昨年末、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)が在特会側の上告を認めない決定をし、同会側に77万円の支払いを命じた大阪高裁判決(昨年6月)が確定した。確定を受けて毎日新聞の動画インタビューに応じた李さんは「証拠集めなどのたびに被害を思い出し、ストレスから不眠や突発性難聴に苦しんだ」と3年余にわたる法廷闘争を振り返り、「この判決はゴールではない。世界から差別をなくすためのスタートだ」と決意を新たにした。

 「名指しでヘイトスピーチをすれば訴えられ、お金を払わなければいけなくなることがはっきりした」。ヘイトスピーチに批判的な記事を書くうちにその標的になったという李さんは、「人種差別と女性差別との複合差別に当たる」と認定した高裁判決の“抑止力”に期待を寄せる。しかし実名が公表されても、あるいは賠償金を請求されてもやめようとしない人たちはおり、今も路上やネット上にヘイトスピーチはあふれている。

 「裁判をしても、私一人の力は弱いと感じた。国や行政などが知恵を絞って全力で取り組んでくれなければ社会は変わらない」と指摘する李さんが求めるのは、刑事罰の導入も含めたより実効性のある対策だ。

 訴訟で代理人を務めた上瀧浩子弁護士は、複合差別を認めた高裁判決を一定程度評価しながらも、現行法下では「在日朝鮮人」など不特定多数に向けられた場合に被害回復ができないことを問題視。その上で、「新たな法規範を設けるとともに、インターネット事業者などの自己チェック態勢をより強化していくべきだ」と訴える。

高裁判決後、支援者から花束を贈られ笑顔の李信恵さん(中央)=大阪市北区で2017年6月19日、後藤由耶撮影

 李さんは毎回の口頭弁論に朝鮮半島の民族衣装であるチマ・チョゴリ姿で臨んだ。「自分を奮い立たせ、勇気をまとう意味があった」という。母のチマ・チョゴリや、在日コリアン無年金訴訟の原告が織った西陣織なども縫い込んで、毎回違うものを仕立てた。傍聴席にもチマ・チョゴリや男性用のパジ・チョゴリ姿の人が目立った。「社会がそうさせているのかは分からないが、ヘイトスピーチをする人たちももしかしたら『被害者』かもしれない。傷つく人も、傷つける人も両方がいなくなるよう、何ができるかもっと考えていきたい」と李さんは先を見すえている。

 桜井氏は2016年9月の大阪地裁判決時、代理人弁護士を通じて「判決は在特会側への社会的偏見に基づくもので不当」などとする談話を出した。また、昨年6月の大阪高裁判決時には代理人弁護士を通じ、「賠償金が77万円にとどまったことは、判決の政治利用をもくろむ勢力の思惑をくじく結果となったことを評価する」とコメントしている。【後藤由耶】

大阪ヘイトスピーチ訴訟

 桜井氏が神戸・三宮での街宣活動で「朝鮮人のババア」と発言したり、ツイッターで「不逞鮮人(ふていせんじん)」と書き込むなどしたりしたのは名誉毀損(きそん)に当たるとして、東大阪市在住の李さんが2014年に大阪地裁に提訴。地裁判決(16年9月)は「在日朝鮮人への差別を助長、増幅させる意図があった」と認定し、在特会側に77万円の支払いを命じた。控訴審判決は人種差別を認めた1審から踏み込み、性差別との「複合差別」も認めたが、命じた支払額自体は変わらなかった。

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