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我らが少女A

/219 第6章 27=高村薫 多田和博・挿画監修

 そして同じ夜、吉祥寺病院へ妻の弘子を見舞った浅井隆夫もまた、集中力の切れた棒になって、開放病棟の四人部屋の妻のベッドの傍らに立っている。

 病院へ来る途中、かつて合田の部下だった小金井署の刑事課長代理が、忍が多磨霊園の入り口で職質されたことをわざわざ電話で知らせてきて、思わず吐きそうになった。先方はたぶん、忍が何かを起こしてからでは遅いというアドバイスのつもりだったのかもしれないが、さほど深い意図があるはずもないそんな電話も、浅井には精神科病院へ妻を見舞いに行く自分の惨めさに塩を塗るようなもので、ひとたびそうなると浅井こそ思考や感情の整理がつかなくなるのだ。浅井は、忍のADHDは弘子の遺伝だと思い込んでいるが、ほんとうは自身のほうがたぶんにその傾向があることに気づいていない。

 もっとも、病院の静けさは浅井の脳の興奮をちょっと鎮め、代わりに浅井は足が地球にのめり込むような疲労…

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