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社説

米国が鉄鋼輸入制限へ 踏み絵迫る超大国の専横

 超大国がルールを軽視し力ずくで相手に譲歩を迫る。こんな専横がまかり通れば国際秩序は成立しない。

     トランプ米大統領は鉄鋼などに高関税を課して輸入を制限すると決め、来週末に発動する。極めて異例の強硬な保護主義政策である。

     まず問題なのは、世界貿易機関(WTO)の協定に違反する疑いがあることだ。安い鉄鋼の輸入で軍事関連産業が衰退し安全保障が脅かされると米国は主張する。だがWTOが認めるのは有事などに限られ、方便として持ち出したとしか思えない。

     さらに懸念されるのは、日本や欧州も輸入制限の対象に含め、除外するかは米国の通商や防衛への貢献次第で判断するとしたことだ。

     日欧はすぐ除外を求めたが、米国は引き換えに市場開放や防衛費増額を迫ってくる可能性がある。2国間交渉では経済や軍事で圧倒的な力を持つ米国が有利だ。「米国第一」をむき出しにした踏み絵と言える。

     トランプ氏は貿易赤字削減を最優先課題に掲げている。強硬策をちらつかせて成果を勝ち取り、秋の中間選挙にアピールしたいのだろう。

     だが、もともと米国が問題にしてきたのは安い鉄鋼を輸出する中国だ。輸入制限を同盟国との通商取引に使えば、安全保障を根拠とする理屈そのものが成り立たなくなる。

     そもそも世界経済を支えてきた自由貿易は多国間の協調が前提だ。

     高関税で自国産業を守っても、輸入品の値上がりを招き、経済にはマイナスに働く。各国が互いに市場を開放して、貿易を活発にした方が、より大きな国益に結びつく。

     貿易でもめた場合は、一方的な輸入制限に走らず、WTOの手続きに沿って解決を図るのが原則だ。

     米国には本来、世界のリーダーとして協調を主導する責任がある。それなのに、自国優先に突き進めば自由貿易を根幹から揺さぶる。

     欧州は米国の代表的なブランド製品に報復関税を課す準備に着手した。中国も対抗措置を示唆している。貿易戦争になれば世界経済が混乱する。結局は米国の利益にならない。

     日本も除外が認められれば済むという話ではない。主要国として、自由貿易体制の維持に責任を負っているはずだ。欧州などとともに米国に撤回を働きかけるべきである。

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