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華恵の本と私の物語

/20 Presents

 あにがアメリカから日本にっぽんにきたのは、わたしが小学しょうがく年生ねんせいはるだった。4ねんぶりにいっしょにらせるのがうれしくて、わたしはいつもあににひっついていた。

     中学ちゅうがく入学にゅうがくしたあには、しばらくして様子ようすわった。

     帰宅時間きたくじかんおそくなり、いえにいるとおもったら、かみがザクザクとがった、するど友達ともだち部屋へやがっていた。あにこわひとになっていくようで、わたしはどうせっしたらいいかわからなくなっていった。

     あるよるあにひさしぶりにわたしにはなしかけてきた。

     「きないろ、なんだっけ」

     突然とつぜん、どうしたの?

     わたしはポカンとなった。

     数日後すうじつご

     「誕生日たんじょうびだよな。おめでとう」とあにがわたしにしたのは、木製もくせい脚立きゃたつだった。

     椅子いすにもなるし、だいにもなる。美術びじゅつ授業じゅぎょうつくったものらしい。

     みなみしまうみのような、けるようなあお。わたしのきないろられている。うらはスプレーできつけられたオレンジいろあにきないろだ。

     座面ざめんには「華恵はなえ」の文字もじはいっていて、側面そくめんには「元気げんきがあれば、なんでもできる!」とちいさくいてある。

     アントニオ猪木いのきみたい。「だりぃ」が口癖くちぐせあにには、あまりにも似合にあわない言葉ことば

     ギャップ、はげしすぎ。わたしはおもわずした。

     「は?」とあにがわたしをにらむ。なにわらってんだよ?といたいのがわかる。わたしはあわてて「ありがとう」とった。

     あに高校こうこうがるまえにアメリカへもどることになった。そしてそれきり、あにとの生活せいかつは、途切とぎれてしまった。

      + + + + 

     『Presents』には、ある女性じょせい幼少期ようしょうきからぬまでのあいだる、さまざまなおくものはなしてきます。まれてはじめておくられる「名前なまえ」にはじまり、ランドセル、はつキス、記憶きおくなど、一生いっしょうにわたり、ひとはいろんなおくものけとるのだということに気付きづかされます。

     大人おとなになって、ひさしぶりにあにから連絡れんらくがきました。わたしのいえあそびにて、脚立きゃたつて、「こんなヘンテコなもの、オレ、つくったっけ?」とわらっていました。

     あに本当ほんとうわすれたかどうかはわかりませんが、あにとわたしのきないろめられた、ちょっとダサい脚立きゃたつは、あにがアメリカにもどったあとも、わたしが一人ひとりらしをはじめた時期じきも、ずっといっしょです。

     頑丈がんじょうで、絶対ぜったいにガタつかない脚立きゃたつあにきなオレンジとわたしのきなあおは、何年なんねんたってもおなじです。

    「これからもずっといっしょにいるから、大丈夫だいじょうぶだよ」と、脚立きゃたつ言葉ことばこえてくるようながしました。


    『Presents』

    角田かくた光代みつよちょ

    双葉文庫ふたばぶんこ 616えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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