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湖国で働く

/37 太陽精機 製本機器で世界を開拓 /滋賀

大型製本システムなど最新鋭の機器が展示されている「ホリゾンACADEMY」。太陽精機の堀英二郎社長は「技術力に磨きをかけ、変化に対応する機器を送り続けていく」と話す=滋賀県高島市新旭町で、土居和弘撮影

 本が私たちの手に届くまでに、製本作業は欠かせない。「太陽精機」(高島市)は、その製本関連機器のグローバルメーカーだ。「ホリゾン」ブランドの自社製品の販売先は100カ国を超え、必要なときに必要な量だけ印刷する「オンデマンド印刷」対応機器では世界トップクラスのシェアを築く。堀英二郎社長(66)は「ホリゾン製品は、操作が簡単で使いやすいのが自慢」と言う。デジタル化、高速化が著しい印刷・製本業界で、変化に対応する開発力に磨きをかけていている。【土居和弘】

     琵琶湖畔の約14ヘクタールの敷地に建つ、びわこ工場は、太陽精機の開発・製造拠点だ。構内の「ホリゾン ACADEMY(アカデミー)」には、自社開発の最新機器が展示されている。

     製本には、刷り上がった印刷物を、折る→ページをそろえる(丁合(ちょうあい))→のりやホチキスで綴(と)じる(製本)→四方を切って仕上げる(断裁)--の4工程がある。室内には、その4工程を連続して行う、大小さまざまな「印刷後処理機」が並ぶ。1時間数千冊の処理が可能な大型システムや、オンデマンド印刷に対応した機器、デジタルプリンターと接続する機器などで、いずれも最新のIT(情報技術)やハイテクの技術を搭載している。デジタルプリントは版下製作の必要がない印刷方法で、今後さらに広がると考えており、関連機器の開発に力を注いでいる。

     「アカデミー」は自社製品のショールームであるとともに、海外からの来訪を含む顧客や代理店関係者が機器を習熟する研修施設でもある。また、来訪者からさまざまな要望を受け、製品の開発・改良に生かすことができる。

     「当社は、製品の企画、研究・開発、製造、販売のすべてを一貫してやってきた。だから、お客さんの要望や市場のニーズに敏感に反応できるし、品質も保証できる」。堀さんは自社の強みに自信を見せる。

     創業は1946年。技術者だった父の故八郎さんが、京都で電気器具の試作・修理を始めた。学校教育の理科実験用電気機器の製造を始め、経営は軌道に乗った。

     しかし、受託生産が主で、八郎さんは60年代後半、自社製品の開発を志すようになる。世界各地の事務機器の展示会を巡るうちに、製本機に目を付けた。書籍向けは欧米製を中心に国内の印刷・製本業界に普及していたものの、印刷物は書籍に限らない。会社には書類がたくさんあり、手軽に綴じて整理する小型機器の開発に商機を見いだした。

    初めての自社製品として開発した「卓上製本機」=太陽精機提供

     とはいえ、ノウハウはない。欧米製の製本機の構造の研究を重ねて、いちから作り上げたのが、事務所向け「卓上製本機」だった。重さ約50キロで、営業担当者は1台ずつ持って、アポなしの飛び込みセールスをした。狙いは京都に多く集まる大学・研究機関だった。論文や電算装置からはき出される用紙などの整理に重宝がられた。

     卓上製本機に続き、紙折機、丁合機、断裁機も自社開発し、73年に製本関連機器メーカーとして再出発した。当時、国内では、「更紙」に代表される、上質とはいえない紙が少なからず印刷用紙として使用されていた時代だ。紙詰まりなどが起きないよう改良も重ねた。

     製品は商社経由の販売も行っていた。しかし、販売開始早々に石油ショックに伴う不況となり、商社は扱いを拒否。このため販売子会社「ホリゾン」を設立し、直販するようになった。「これが、飛躍するきっかけになった」と、堀さんは言う。「結果的に、顧客の反応やニーズをすぐ吸い上げることができる体制になった」

     機器の販売先が全国各地の印刷・製本会社に広がり、76年に用地を購入し、びわこ工場を建設。93年には、本格的な書籍製本向けにも参入した。オンデマンド印刷対応という、大量印刷とは違った新たな市場での需要を開拓していった。

     堀さんが入社したのは80年だった。2年半、米国の大学で経営学を学んで、帰国したばかりだった。「父はおそらく、世界展開を考えていたのでしょうね」。翌年、海外販売子会社「ホリゾン・インターナショナル」社長に就任した堀さんは約30年間、海外販売を担った。

     販路開拓先としてまず乗り込んだのはヨーロッパ。活版印刷が誕生したヨーロッパは製本機器の性能も高いとされてきた。しかし、日本で開いた展示会でも、太陽精機製の機器は評価が高く、好感触もあった。

     太陽精機の製品は、据え付け場所をとらない中・小型を主力としていた。また、操作は専門知識がなくても可能だった。欧米メーカーの同種機器は、そばにエンジニアが付いて操作するが大半だった。素人でも容易に扱えることで人気が集まった。

     狙いは当たり、オランダ、英国、本場・ドイツと各国での販売代理店契約に成功、北米などにも広がり、90年代にはシンガポールなど東南アジアにも進出した。

     現在、インターネットの普及で、印刷・製本業界にも電子書籍の登場などデジタル化の波が襲う。しかし、堀さんは「紙媒体はなくならない。電子媒体と共存が可能だ」と言う。「保存性に優れ、人の五感に響くところが、本を代表とする紙媒体の良さだ」。しかし、情報が流れる速さやその多様化に素早く対応できる機器の開発が重要だと思っている。「そのための技術力や、部品や機器の製造機械の多くも内製するものづくり力に、いっそう磨きをかけたい」と決意している。=次回は4月16日


     ◆びわこ工場、地元採用200人超

    太陽精機株式会社

     本社所在地・高島市新旭町旭字城ノ下1600。法人設立は1953年。資本金(総払込資本金)2880万円。ドイツの現地法人を含むグループ会社は4社。連結売上高165億円(2017年度)。従業員はグループ計約580人。びわこ工場で約350人が働き、うち地元採用は200人超。

       ◇

     太陽精機の製品の販売先は、主に国内外の大手を含む印刷・製本会社だ。しかし、社内のホリゾン事業部では、Tシャツなどに簡単にプリントできる「シルクスクリーン印刷」機器なども販売し、一般消費者も含めた、より裾野の広い事業も展開している。このほか、マグカップやマウスパッドに熱転写する商品や、ユニホームのマーク文字などをカットする商品も扱っている。

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