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社説

大統領経験者の逮捕 問われる韓国の政治文化

 韓国の李明博(イミョンバク)元大統領が収賄や横領などの疑いで逮捕された。後任の朴槿恵(パククネ)前大統領に続き、直近の大統領経験者2人が1年の間に逮捕される異常事態である。

     李容疑者に対しては、かねて疑惑が指摘されてきた。不正があったのなら追及するのは当然だろう。

     ただ、李容疑者は、盧武鉉(ノムヒョン)元大統領の死に対する「報復だ」と反論してきた。李政権下で不正を追及されて自殺した盧氏は、文在寅(ムンジェイン)大統領にとって政治の師にあたるからだ。

     文氏は否定するが、政治報復という疑念を生む素地はあった。「積弊清算」と呼ばれる現政権による不正追及の主たる標的は李政権だという見方が当初から強かったからだ。

     それにしても韓国の大統領経験者には負のイメージがつきまとう。

     初代の李承晩(イスンマン)は失脚して米国に亡命し、朴正熙(パクチョンヒ)は側近に射殺された。全斗煥(チョンドゥファン)、盧泰愚(ノテウ)の両氏は不正蓄財などで投獄された。金泳三(キムヨンサム)、金大中(キムデジュン)両氏も息子が逮捕されている。

     退任後の大統領は本来なら党派を超えたご意見番となるのを期待される立場なのに、これでは社会的損失が大きいだろう。

     韓国の政治文化は円すい形の「渦巻き」にたとえられる。権力という頂点に向かって吹き上げる強い上昇気流にすべての人が殺到するというものだ。徹底的な中央集権だった朝鮮王朝の時代に原点を求めることができる。

     大統領には実際の制度より強い権力が集中し、家族や側近も本来は持たないはずの影響力を発揮できる。不正を生みやすい構造だ。

     世界的大企業になった韓国の財閥にワンマン経営的色彩が残るのも、同様の文化的背景があろう。

     権力が絶対的であるだけに政治闘争は激烈になる。昨年の大統領選の遊説で文氏陣営の有力者が「政権を取ったら保守派を壊滅させねばならない」と語ったほどだ。

     韓国政界では大統領の権限を弱める制度改正の必要性が叫ばれ続けてきたが、与野党は総論で賛成しつつも各論では対立し、まとまらない。

     しかし、1987年の民主化から30年余りを経ても大統領経験者が次々と逮捕されるのを正常とは言えまい。韓国の民主政治にとっての大きな課題である。

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