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開いた扉・旧優生保護法を問う

/5止 違憲性問う訴訟、突破口に 解明・救済、これから

強制不妊手術について考える議員連盟の設立総会後の勉強会に出席する国会議員ら=衆院第1議員会館で、小出洋平撮影

 「同じ背景ではなかったかと、今は思う」

     3月下旬。2000~04年に厚相と厚生労働相を務めた坂口力・元衆院議員(83)はかみしめるように語った。「同じ」とは、旧優生保護法に基づく障害者らへの強制不妊手術と、ハンセン病患者への隔離政策を指す。01年、国はハンセン病を理由とする事実上の不妊手術などを「非人道的」と断罪した熊本地裁判決を受け入れ、謝罪した。坂口氏は国会で「日本民族の優秀性を優先するが故に、合わないものは抹殺しようという思想があった」と答弁した。

     だが、障害者らが不妊手術を強いられていたことは「意識に上らなかった」。当時の議論は、中絶を認める要件が中心で、不妊手術の是非が語られることは少なかった。

     声を上げる人たちはいた。1996年の法改正後にできた市民団体「優生手術に対する謝罪を求める会」は02~03年、「ハンセン病問題への対応と全く同じことが旧優生保護法に対してもなされるべきだ」とする署名を集め、厚労相に要望書を渡そうとした。与野党議員とも面会して趣旨を説明した。

     しかし、厚労相への面会はかなわず、秘書に「私の力では解決できない」と言われたという。それから約15年。「厚い扉」は閉ざされ続けた。

        ◇

     宮城県の60代女性が強制手術の違憲性を問う初の国賠訴訟を仙台地裁に起こすことを昨年12月、毎日新聞が報じると、状況は一変した。特に同法下の強制手術をほとんど知らなかった政治家たちは衝撃を受けた。閣僚の一人は「戦前のことかと思った」と驚く。

     社民党の福島瑞穂副党首は16年当時、国会で救済の必要性などを質問したが、議論は進まなかった。福島氏は提訴後の2月上旬、自民党の尾辻秀久元厚労相を訪ね、「超党派の議員連盟を立ち上げたい」と会長就任を打診した。与党が入ることで実態調査などがやりやすくなるとの思いからだった。

     過去にも議連で福島氏とたびたび連携した尾辻氏は、快諾した。被害者を置き去りにしない「政治の知恵」が、ハンセン病患者の救済時と同様に今回も活用され、塩崎恭久前厚労相らも加わった。

     スウェ-デンでは地元紙が、不妊手術を強いた法律があったことをスクープし、政府が直ちに救済へ動いた。スウェ-デンで賠償金が支払われたのは法撤廃から22年後で、日本も今年で法改正から22年。市野川容孝・東京大教授(社会学)は「過去の政策に正面から向き合うには、それくらいかかるのかもしれない」と語り、障害者差別解消法の施行(16年)など「時代の変化」も指摘した。

     扉は開いた。しかし、被害の全容解明や救済の議論はこれから始まる。すべての当事者に光が届くのはいつか。法律を作った国会も、手術を奨励した行政も、まだ謝罪すらしていない。=おわり

        ◇

     この連載は、岩崎歩、遠藤大志、奥山はるな、竹内望、藤沢美由紀が担当しました。

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