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 「今朝さばいた魚だよ」。2月の土曜日、山口県上関町の離島・祝島の広場に、大沢太陽さん(33)の元気な声が響いた。島の同世代と一緒に始めた月に1度の朝市で「さかな屋」を開く。六つほどのブースが並ぶが魚を売るのは大沢さんだけ。地元漁師から仕入れたマダイやカレイ、イカなど十数キロがすぐに完売した。豊かな漁場に囲まれていながら、大半が本土側に卸されるため、島には鮮魚店がない。

     自分が魚を売ることになるとは思ってもいなかった。島生まれだが、生後すぐに離れ、埼玉県で育った。お笑い芸人になる夢を25歳であきらめ、カメラマンになった。

     ただ島には毎年、母と共に里帰りしていた。一昨年8月、親戚に頼まれて島の神事「神舞(かんまい)」に参加した。平安時代の故事に起源を持ち、4年に1度、大分から訪れる神職らを歓迎する祭りだ。ところが、神舞の一員になってみると、幼少時と比べ参加者も出店も少なく、島の過疎化を肌で感じた。「このままでは島はなくなる」と危機感を覚え、昨夏、島に住民票を移した。

     島に住んでみると、漁師たちが「魚価低迷で食っていけない」と悩んでいた。「漁師と住民をつないで何かやってみよう」と始めたのが「さかな屋」だ。朝市だけでなく、住民から「魚がほしい」と頼まれると漁師に釣ってもらい、歩いて届ける。「漁師も買った人も笑顔にしたい」と話す。

     普段は季節の手間仕事や写真撮影で生活しているが、最近は「さかな屋」の仕事も少しずつ増えてきた。今後は島のタイをブランド化し、インターネットで県内外に販売する夢も描く。かつてのにぎわいが戻る日を願いながら。<文・土田暁彦>(「たまてばこ」は今回で終わります)

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