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奇跡の傍らで

産科の実態伝えたい シビアな現場、魅力も=荻田和秀・りんくう総合医療センター産科医

コウノドリ

 大阪の南端にあるりんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)に勤務しています。専門は周産期医療。周産期とは妊娠22週から出生後7日未満までを指しますが、「22週以降しか診ません」という周産期科医はほとんどいません。私も、妊娠前や妊娠初期はもちろん、月経困難症(生理痛)から更年期の諸症状、子宮や卵巣の腫瘍や避妊相談まで診察しています。

     1980年代後半に学生時代を過ごした、いわゆる「バブル世代」です。ドラマで有名な半沢直樹さんと一緒です。当時は夏になると、そこかしこでジャズフェスティバルがあり、熱に浮かされたような時代でした。私も授業もろくに出ず、音楽活動に打ち込んでいました。プロジャズピアニストを目指してオーディションを受けたこともあります。医学部医学科は6年制。最初の2年は教養と基礎医学、次の2年は基礎医学実習と臨床医学の座学です。将来像を決められないまま、漠然と過ごしていましたが、さすがに4年次後半の臨床実習ともなると実際に患者さんと接しないといけません。にわかに勉強を始めました。

     通っていた香川医科大(現香川大)では、消防署への泊まり込みのほか、離島のハンセン病施設や山の中の診療所での実習など、ダメ学生の目を覚めさせる経験が数多くありました。そこで救急医療に興味が湧きました。生死が隣り合わせの極限状態の医療の迫力に圧倒されたのです。

     実は父も産婦人科の勤務医で、「産婦人科医にだけはなるな」と言われていました。僕のようなぐうたらが自分と同じ分野にいると迷惑だと考えたのかもしれません。ところが、産婦人科の実習に行ってみると緊急搬送は来るし、緊急帝王切開はあるしで、かなりシビアな外科系救急の診療科でした。一方で、大変なお産を終えたお母さんに「おめでとう」と言葉をかけられるのも、他の科にはない魅力でした。さらに、更年期や思春期などに関わる内分泌(ホルモン)医学や子宮がんや卵巣がんなどの腫瘍外科学、筋腫や内膜症などに加えて不妊治療なども産婦人科医の重要な仕事です。すると、大変興味が湧き、産婦人科医になってしまいました(もちろん、父親とは違う所属先ですが)。そんな経緯で、女性の相談には何でも乗りたいと考えています。

     担当した患者さんの中にマンガ家の奥様がいた縁で、「産科医療の現場をマンガにしたい」という相談を受けました。取材に協力してできたのが、ドラマにもなった「コウノドリ」というマンガです。不思議な縁だと思います。

     妊娠・出産は病気ではありません。だから「産科医」なんて必要ないはずです。しかし妊娠や出産は女性にとって「生理現象」で済まされないほどの負担がかかります。日本は現在、世界で最も周産期の安全な国といわれていますが、まだまだ課題が残っています。連載の場を借りて、皆様に少しだけ伝えたいと考えています。=次回は5月6日掲載


     ■人物略歴

    おぎた・かずひで

     1966年大阪市生まれ。香川医大卒。大阪府立母子保健総合医療センターなどを経て、2008年から現職。産科医を描いたマンガ「コウノドリ」の主人公のモデル。ドラマ版の取材協力も務める。

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