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社説

エジプト・シシ大統領再選 いつまで軍人政治なのか

 アラブ世界が強権政治と決別する難しさを、改めて痛感させられた選挙だった。

     エジプトのシシ大統領が再選を決めた。得票率は初当選時とほぼ同じ約97%だが、投票率は前回より6ポイント落ちて約41%にとどまった。

     当然だろう。有力候補が次々に出馬を辞退、または当局に身柄を拘束され、残ったのはかつて同氏を支持していた小党の党首だけ。

     それも無競争を避ける立候補という気配が濃厚では、白けるなと有権者に言う方が無理である。

     エジプトでは2011年の民衆運動「アラブの春」によって長期独裁のムバラク政権が崩壊し、イスラム組織「ムスリム同胞団」を基盤とするモルシ政権が発足した。同国初の民選大統領である。

     ところが、モルシ氏も強引な手法などで反感を買い、民衆の抗議行動が盛り上がると、国防相だったシシ氏は軍を率いてモルシ氏を退陣に追い込む。そして14年の大統領選で初当選して今日に至っている。

     シシ政権はムスリム同胞団を非合法化し、「アラブの春」の原動力ともなった青年組織を封じ込め、記者の拘束やウェブサイト閉鎖も含めて内外のメディアと対立してきた。国際組織の調査によると、エジプトにおける報道の自由度は180カ国・地域中161位の低位にある。

     シシ氏は改革や民主化より秩序が第一と考えているのだろう。だが、「民衆革命」と呼ばれた11年時の変革の息吹を抑え込んで権力の維持を図るのなら、崩壊したイラクのフセイン政権やリビアのカダフィ政権とどこが違うのか。

     エジプトでは王制を倒したナセル元大統領以来、軍人が権力を握り軍の利権が隅々に及ぶ。庶民は今、変動相場制への移行に伴うインフレに悩んでいるが、利権の構造を変えない限り貧困からの脱出は難しい。

     古代文明の地エジプトは世界の観光客が安らげる場所だった。アラブ世界のまとめ役としても一定の安定感と信頼感があった。独裁とはいえムバラク政権下のエジプトの方が今より希望を持てたのではないか。

     シシ政権は穏健派イスラム勢力との融和や民主化へとかじを切るべきだ。旧態依然たる「軍人政治」が続けば真の安定は訪れまい。

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