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教育改革シンポジウム

毎日大学フォーラムin名古屋 大学に求められるブランディング

大学フォーラムで講演に聴き入る参加者

選ばれる存在へ

 「第14回毎日大学フォーラム」(毎日新聞社主催、文部科学省後援)が3月2日、名古屋市中村区のミッドランドスクエアで開かれた。テーマは「選ばれる大学-大学のブランディングを考える」。各大学は他にはない研究や人材育成によるブランドづくりと、その情報発信を通して受験生、在学生、地域や企業などから選ばれる存在になることで少子化の時代を生き残ろうとしている。フォーラムでは文科省大学振興課の林剛史課長補佐の講演に続き、千葉大の徳久剛史学長、金沢工業大の大澤敏学長が、それぞれの取り組みを報告した。最後に毎日新聞社の中根正義・大学センター長をコーディネーターに3氏が意見交換した。東海地区の大学関係者ら50人が聴き入った。

    はやし・たけし 1979年生まれ。2004年、東京大教育学部卒、同年文部科学省入省。高等教育局専門教育課企画係長、内閣府東日本大震災被災者生活支援特別対策本部主査、復興庁統括官付参事官付主査、文科省初等中等教育局初等中等企画課専門官。14年静岡県教委義務教育課長を経て17年から現職

    目指す頂を示さねば 教職協働で運営への参加を

    文科省大学振興課課長補佐 林剛史氏

     少子化の進行で、日本の18歳人口は現在の約120万人から2040年には約88万人にまで減少するという推計もあります。一方、大学の数は05年度に726校でしたが、短大からの転換などもあって、17年度は780校へと増加しています。学生数は251万人から258万人に増加していますが、大学数の増加からは大学間の競争が激しくなったことが読み取れます。

     また、10~20年後には日本の労働人口の約49%が、人工知能やロボットなどに代替できるようになる可能性が高いという推計が出ています。漫然と学生を社会に送り出すのではなく、機械に取って代わられないような人材育成が大学には求められています。

     こうした状況を踏まえ、政府は中央教育審議会大学分科会の将来構想部会で40年に向けた高等教育の将来構想を検討しています。教育の内容はもちろんですが、今後の高等教育全体の規模も視野に入れ、地域の偏在、学位通用性、予算配分を議論しています。

     高等教育改革は「大学教育の改革」「学術の進展、社会変化への対応」「ガバナンス改革、基盤整備」の三つに大別されますが、このうち「ガバナンス」は学長のリーダーシップの確立など経営体の強化に関わるもので、今回のシンポジウムのテーマ「ブランディング強化」が取り上げられています。

     中教審は05年の答申で、大学の機能分化という方向性を示しています。それまで各大学は量的な拡大をしてきましたが、全ての大学が同じ頂を目指すのではなく、違っていても良いという考え方です。これを踏まえて文科省は、各大学が強みを生かし、それを加速させるよう政策誘導しています。

     大学が教育改革を実現する上での指針として、政府は三つのポリシーの策定と公表を求めています。「卒業認定、学位授与の方針」「教育課程編成、実施の方針」「入学者受け入れの方針」です。ポリシーの策定は大学のブランディングのツールになると考えます。

     教育の質の向上には計画、実行、評価、改革を繰り返す「PDCAサイクル」が必要ですが、それを適切に機能させるためには学生の学修成果の可視化が重要となります。これで目標と現状とのギャップが分かり、教育手法の見直しが可能となるためです。

     大きな制度改革としては高大接続改革に関連して、大学センター試験は20年度に「大学入学共通テスト」となり、記述式問題が導入されます。また英語は「読む」「聞く」に「話す」「書く」の二つを加えた4技能の評価となります。

     大学ガバナンス改革では学校教育法等が改正され、15年4月に施行されています。趣旨は、大学運営における学長のリーダーシップの確立などガバナンス改革を促進するために、副学長や教授会などの職や組織の規定を見直すものです。各大学のさらなる自主的、自律的なガバナンス改革が求められますが、ブランディングの観点からすれば教職が協働することが必要です。

     大学の職員数は増加傾向にあります。一方、教育や研究にもっと時間を割きたいと考える教員が増えています。大学の職員組織である事務局は派生的な組織でしたが、ガバナンス改革の推進において事務職員が教員と対等な立場となり、教職協働で大学運営に参加することが重要です。ブランディングにおいても職員は底力になります。

    千葉大西千葉キャンパス(千葉市稲毛区)のアカデミック・リンク・センター。学生らが能動的に学び、考えるための環境が整備されている

    国立大学第1位を目指した機能強化戦略 海外拠点生かし研究力示す

    とくひさ・たけし 1948年生まれ。千葉大医学部卒、同大学院博士課程修了。ドイツ・ケルン大付属遺伝学研究所客員研究員、神戸大医学部付属医学研究国際交流センター教授、千葉大大学院医学研究院教授、研究院長を経て2014年から現職。専門は免疫学

    千葉大学 徳久剛史学長

     法人化された国立大学は2016年度から第3期中期目標期間がスタートし、大学の機能強化の方向性に応じた三つの重点支援枠に分類されました。このうち、本学は旧帝大7校を含む重点支援対象の「全学的な分野で卓越」に位置づけられました。これに伴って本学は「世界最高水準の教育研究機能を有する総合大学」としての新たなビジョン(116~21年度)を策定しました。

     「教育三峰の推進」「国際社会で活躍できる次世代型人材の育成」「次世代を担うイノベーションの創出」「大学ブランディングの強化」「教職員による協働体制の強化」の5本の柱からなります。

     「教育三峰」は「生命科学」「自然科学」「人文社会科学」の3部門でピークになるような先端的研究と教育の実現を目指しています。

     「生命科学」は医学、薬学、看護学部のある亥鼻いのはなキャンパス(千葉市中央区)を治療学拠点として高機能化させる構想です。既に01年度に医学・薬学融合型大学院「医学薬学府」を設立しています。17年度には千葉大学病院が臨床研究中核病院に認定されるという成果を挙げました。

     「自然科学」では理学と工学が融合した大学院「融合理工学府」を、「人文社会科学」では文学、法政経などが融合した大学院「人文公共学府」を17年度に設置しました。

     一方、異分野の共同研究によって独創性のある多様な研究を創出するシステムとして学長を基幹長とする「グローバルプロミネント(卓越)研究基幹」を設置し、「粘膜免疫アレルギー治療学」など六つの重点研究を決めてサポートしています。

     「イノベーション」としては、千葉県で豊富に産出されるヨウ素の製品を製造する拠点として「千葉ヨウ素資源イノベーションセンター」を本学などが構想し、文科省の事業に採択されています。

     「グローバル人材」はこれまでも取り組んでおり、11~14年度と16年度には海外派遣学生数が国立大の中で1位です。16年度は、この司令塔として国際未来教育基幹を設置しました。

     また、グローバル人材育成の核となる国際教養学部を新設しました。世界が抱える課題について日本独自の視点で課題を発見・解決して世界に発信する人材の育成を目指す文理混合の学部で、全員が留学します。

     特徴としては、学びを支援する専門職制度SULA(Super University Learning Administrator、スーラ)の設置です。スーラは事務職員と教員の中間的な役割を担い、学生の課題発見や科目選択、留学について個々の学生の状況に合わせた助言を行います。17年度からは全学部に配置しています。

     以上述べてきたように本学のブランディング強化のポイントは、卓越した教育研究力による国際的な信頼の向上が第一です。そして広報戦略本部の体制強化、海外キャンパスの活用による教育研究の国際展開などが挙げられます。

     さまざまな努力によって、入学者選抜試験の志願者数は16年度から3年連続で国立大学1位となりました=図表。若者は大学に魅力があれば志願してくれると思います。

    金沢工業大扇が丘キャンパス(石川県野々市市)のライブラリーセンター。教室や研究で得た知識をさらに深める場として機能している

    ブランディング事業を通したイノベーション人材育成 地域興して国際貢献

    おおさわ・さとし 1961年生まれ。東京理科大理学部卒。同大学院理学研究科化学専攻博士課程修了。米マサチューセッツ大博士研究員、金沢工業大講師、助教授、教授、バイオ・化学部長、教務部長、副学長を経て2016年から現職。専攻は高分子化学

    金沢工業大学 大澤敏学長

    金沢工業大が所蔵するエッフェル塔の設計図。実際の授業で「現代のエッフェル塔」作成に活用した

     本学はブランディング事業を通したイノベーション人材育成に取り組んでいます。2016、17年度と2年連続で「私立大学研究ブランディング事業」に採択されました。

     16年度の「ICT・Iot・AIの先端技術を活用した地方創生」は、少子高齢化が進む石川県の白山麓で社会実装を通して産業を育成しようという試みです。小水力発電など自然エネルギーの活用、遠隔医療や自動運転といった医療・福祉の充実、そしてICT(情報通信技術)基盤の整備が挙げられます。

     研究フィールドとなる白山麓は日本の少子高齢化を20年ほど先行している中山間地で、ここで成果を挙げられれば日本の将来にも寄与できると考えています。都市部や世界各地にも適用されることになります。

     17年度の「これからの科学技術者倫理研究」は、前年度採択事業を発展させたものです。AI(人工知能)やロボットと人間の共存や情報通信技術がもたらす生活の変化などを研究しています。

     大学の研究室での成果を、白山麓の「地方創生研究所」を拠点として社会実装を通した実験をします。こうした試みは従来、大学では行っておらず、本学のブランディングとしていく考えです。

     120社以上の企業と共同研究しています。例えば、通信基盤の整備のほか、ドローンで地形データを収集し、自動運転やエネルギー供給網の構築などに役立てる取り組みも進めています。

     昨年5月には、流雪溝を活用した小水発電所「白峰まちづくり発電所」を産学連携で完成させました。流雪溝は1年中流れていますが、春から秋にかけて利用して発電、売電収益は、まちづくりに活用します。

     地方創生研究所では多くの社会人が参加し、学生と学んでいます。技術者としての倫理観を討議したり、アクティブラーニングにより、学生は分野や文化、世代を超えたコミュニケーションを体験します。学生の新しい発想と社会人の知恵や経験がかみ合うことで、イノベーションが期待されます。

     ここでの研究の多くは、国連の持続的可能な開発目標(SDGs)に合致し、その人材育成の場ともなっています。功績が認められ高等教育機関としては唯一、第1回ジャパンSDGsアワード官房長官賞を受賞しました。金沢という地方にあっても世界に貢献していることを学生は自覚しました。

     現在、本学が多数所蔵する科学書の原典を活用しています。例えばガリレオやニュートンの初版本を読み解き、彼らが何を考え実行したかを学び、科学の本質を考えます。当時の新建材である鉄を使って構築されたエッフェル塔の設計図を活用し「美と構造」「安全性」について議論し、3Dプリンターで「現代のエッフェル塔」を作成しました。

     遺伝子組み換え技術やAIが社会に与える影響などについても議論しています。新技術が登場したら、必ず授業でその技術への反対、賛成意見について議論し、新技術による人間の思考方法の変化を考えます。

     グローバル人材とは、未知なるもの、多様な解があるものに果敢に挑戦し、多様な人と新しい価値を生み出していく「イノベーション力」のある自立した人材と考えます。

     本学は教育研究に第三者の参画を求め、多様な価値を創造したいと考えています。そして新たな教育研究プロジェクトを導入し、学生に夢を持たせたいと思います。

    毎日新聞大学センター長の中根正義(左)の進行で、和やかに議論が進んだパネルディスカッション

    パネルディスカッション 大学の魅力をどう磨いていくか

     コーディネーター、中根正義(毎日新聞大学センター長) 大学のブランディングは、各大学の過去の取り組みの積み重ね、それを磨くことが重要ではないでしょうか。例えば、金沢工大は図書館をライブラリセンター(LC)に改編し、アクティブラーニングの拠点としています。

     大澤敏・金沢工業大学長 LCに改編後は勉強の場、教育の場にしました。学生が教え合い、そのなかで問題集や学生目線の解説書など授業の教材をつくる学生も出てきました。科学技術の初版本も実は30年以上前から集め所蔵されていましたが、2017年度に「これからの科学技術者倫理研究」が私立大学研究ブランディング事業採択されたことで活用するようになりました。

     林剛史・文科省大学振興課長補佐 私大には「建学の精神」があり、どのような人材を育成するために建学されたのか、今一度、そこに立ち返ることが大事です。企業は社会変化のよって業態を変えていくものもありますが、大学ではそれぞれが得意とする分野やミッション、評判があり、短い間に変化するものではありません。また、創立間もない大学は、ブランディングを進めるうえで学生の成長の可視化が重要となります。

     中根 人口減少の中でブランド力を高め、魅力ある大学をつくることは差し迫った課題ですが、教職員が自校の強みをどれだけ知っているのか疑問に感じることがあります。

     徳久剛史・千葉大学長 ブランディングは教職員の協働がカギで、そのためには情報共有が一番重要となります。本学は、戦略会議を増やし、課長以上の職員が出席することで、事務が円滑になりました。それを続けることで教職員の情報共有は当たり前になりました。

     林 ブランディングは、職員集団を活性化させることが大切です。しかし、大学には意思決定するのは教員で、職員は事務に励むというムードがあります。意識改革を訴えるために大学設置基準等の一部を改正し、教職協働の条文を新設して昨年4月から施行しました。

     大澤 本学では、学生をサポートするのはまず職員で、教員は下支えする存在です。ブランディング事業などで多数のプロジェクトを抱えているので、技師(職員)が関わらなければ回っていかないし、関わることによって職員は学生を理解します。プロジェクトは学生と職員が接する場として一番いい。ブランディングの申請も教職協働でやっています。

     中根 大学の情報を発信する広報は、どうしていますか。

     大澤 組織的には広報が窓口です。学生募集の際の高校回りも広報の一つですが、これは職員が中心となります。教員はそこで得た情報をもとに高校を訪問したり、模擬授業をしたりすることで協力しています。一方、学生の就職は学生を最もよく知る研究室の教員が責任を持ち、場合によっては職員がサポートします。ホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は広報職員が運用しますが、心理学の教員が分析してインパクトのある広報をアドバイスすることもあります。

     徳久 本学は広報戦略室を設けていますが、情報発信とともに不祥事が起きた時の窓口にもなります。従来は当該部局が対応していましたが、一本化しました。メディアとのコミュニケーションもとれるようになり、しっかりと情報を伝えることができています。

     中根 会場からご意見を伺います。

     藤井徳行・岐阜聖徳学園大学長 教職協働は本学も取り組んでいます。ただ、広報は職員中心のものと考えていましたが、議論の中で教員が協力する体制があることを知り、参考になりました。今後も広報に力を入れたいと思います。

     平嶋尚英・名古屋市立大教授 学生が卒業後に社会でどう評価されているかを把握し、ブランディングに生かすことも重要ではないでしょうか。

     大澤 卒業から3年後にフィードバックしています。転職していたら、その理由を収集しています。卒業3年後の動向をデータ化し、どういう学生がどのような企業とマッチするのか分かるようになりました。さらにデータの対象を広げれば、きめ細かい指導が可能になるでしょう。

    ことば

    ●千葉大学 1949年、千葉医科大、千葉師範学校、東京工業専門学校などを包括して新制国立大として発足。5学部でスタートしたが、現在は10学部からなる。独自性の強い学部・学科が多く、国際教養、法政経、園芸、看護の各学部は国立大で唯一、設置されている。98年、日本の大学としては初めて「飛び入学」制度を導入したことで知られ、例年数人の合格者が出ている。学部生1万670人、大学院生3444人(2017年5月現在)が学んでいる。本部は千葉市稲毛区。

    ●金沢工業大学 1965年、石川県に開学した私立大。金沢市近郊、東京・虎ノ門をはじめ7カ所のキャンパスに、7100人の学生が集う全国型の理工系総合大学。県外出身者が75%を占める。「授業」と「課外教育プロジェクト」の相乗効果で、学生を最大限成長させる制度と環境を整え、これまでロボコン世界大会優勝はじめ、就職実績でも高い評価を得ている。近年は、イノベーション創出を可能とする「世代・分野・文化を超えた共創教育」の実践に加え、AIを教育に導入するなど、社会実装型の教育と研究を展開している。第1回「ジャパンSDGsアワード」受賞。本部は石川県野々市市。

    ●私立大学研究ブランディング事業 学長のリーダーシップの下、大学野特色ある研究を基軸として、全学的な独自色を打ち出す取り組みを行う私立大と私立短大に対し、重点的に支援する制度。期間は5年または3年。2016年度に始まった。地域経済・社会、雇用、文化の発展などに関する研究で、地方創生に資する内容(タイプA)と、先端的・学際的な研究拠点の整備により、全国的、あるいは国際的な経済・社会の発展、科学技術の進展に寄与する研究(タイプB)がある。申請は16年度が198校、17年度が188校。選定されたのはそれぞれ40校、60校だった。

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