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余録

「ただより高いものはない…

 「ただより高いものはない」。今では「安物買いの銭失い」と似た意味で使うこともあるが、本来は「ただの物は返礼に苦労したり、無理な頼みごとをされたり、かえって高い代償を払う」という意味合いだ▲もらい物には返礼をという習慣を「互(ご)酬(しゅう)性(せい)」と呼ぶのは文化人類学で、つまりほとんどの人類の文化にはそれがある。ただの物には見返りに人の自由を拘束する力が潜んでいる。代価の支払いや返礼はその呪力を解く儀式なのである▲だが今日、「ただ」と思って使うサービスでかけられる呪力たるや、その比ではない。自分の個人情報、それも嗜好(しこう)や政治信条、友人の情報までネットに流れ、企業や外国政府が利用するところとなる。ことわざにも新解釈が必要だ▲米フェイスブック(FB)のザッカーバーグ氏が米議会で約8700万人の個人情報流出を「私の過ちだ」と陳謝した。性格診断アプリで収集した利用者の情報が不正流出し、米大統領選でロシアに利用された疑いも強いからである▲議員の追及に対し、ザッカーバーグ氏は外部業者のアクセス制限などの対策を示し、個人情報の保護強化にも理解を示した。だが無料のサービス提供の代わりに、個人情報を活用した広告で稼ぐ事業モデルは大きく変えぬ構えである▲どうやら気軽に投じた「いいね!」も、自分の素顔を誰かにのぞかせたと思った方がよさそうだ。FBもツイッターも知らぬ昔の人の大いなる知恵、「ただの値段」への洞察がますます必要なネット社会だ。

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