メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

炎のなかへ

/131 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

三月九日(35)

 錦糸町は東京下町でも有数の繁華街なので、千葉街道の近くまでやってくると街並みがだんだんとにぎやかになってきた。自動車の影がまばらな千葉街道には、都電がゆったりと走っている。時刻はまだ五時になっていなかった。

 春のこの時期でも空は十分なほど明るい。

 タケシと登美子は国民服とモンペ姿で、駅前の横断歩道を渡った。不思議なものだが、同じ国民服やモンペといっても、明らかに着る人のセンスで雰囲気が変わるのだった。タケシはどこか折り目正しく見えるし、和服を仕立て直したモンペも、登美子が身につけると清楚(せいそ)で可憐(かれん)な空気を放っている。そういえば、戦時下だけでなく普通の中学の制服でも、組のなかで着こなしのいい生徒といまひとつの生徒は、はっきりと分かれているものだ。

 夕刻になった駅前のバス操車場では背広や和服にきちんと帽子を頭に載せた大人たちが行列をつくっていた。…

この記事は有料記事です。

残り587文字(全文980文字)

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 覚醒剤 使用容疑で元うたのお兄さんを逮捕
  2. プロ野球 セ・リーグ全日程終了危機 阪神残りは19試合
  3. 安室さんコンサート 療育手帳提示で入場できず 返金へ
  4. 日本維新の会 創始者・橋下氏が新著「維新、失敗だった」
  5. 自民党総裁選 小泉進次郎氏、石破氏を支持

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです