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炎のなかへ

/133 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

三月九日(37)

 江東楽天地にあるすべての映画館が夕日に燃える曇り空の照り返しを浴びて、穏やかに色づいていた。タケシと登美子はおたがいの顔を指さして声にならない声をあげた。

「うわー、タケシくん、これ」

 映画の渓谷の両側を形づくるたくさんの映画館と飲食店が夕日色に染めあげられている。透明なガラス窓は飴(あめ)細工のように澄んで、つややかな光を表面に伸ばしている。もっとも飲食店の多くは食材不足で店を閉めていた。数すくない暖簾(のれん)を出している店は、客が自分で食材をもちこんで料理してもらう営業手法をとっている。

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