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社説

陸上自衛隊のイラク日報 保存と公開を根付かせよ

 陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報がようやく公開された。

     日報は「ない」と防衛省が野党に回答したのは昨年2月だ。翌3月に陸自内で見つかったが、1年以上、防衛相に報告されなかった。事実上の隠蔽(いんぺい)といわれても仕方あるまい。

     2006年1月22日の日報には英国軍と武装勢力の「戦闘が拡大」と記述されていた。小野寺五典防衛相は「(イラク復興支援特別措置法の定める)非戦闘地域の要件を満たしていた」との認識を示したが、当時の治安情勢を検証する必要がある。

     陸自が派遣されたイラク南部サマワでは宿営地への砲弾攻撃が10回以上に及び、「治安は比較的安定している」という当時の政府説明には批判も強かった。日報を読むと、派遣当初から陸自を狙った「脅威情報」があり、車両爆弾などによる攻撃を常時警戒していたことがわかる。

     自衛隊という実力組織の海外派遣にはなお賛否両論がある。だからこそ、現場で何が起きたかを記録し、政治の場で妥当性を議論することが厳格な文民統制(シビリアンコントロール)の確保に欠かせない。

     その意味で「自衛隊初の戦地派遣」といわれたイラク派遣の日報は一級の資料だ。「戦闘」の記述は重要ではあるが、その有無ばかりにとらわれていたら、日本の安全保障論議は成熟しない。冷静に活動内容を評価する中で問題点を明らかにし、その教訓を今後に生かせばいい。

     南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報にも「戦闘」とあり、昨年の国会で追及されていた。イラク日報の公開が遅れた裏に「戦闘」を隠す意識が働いていたとすれば、文民統制の観点からも問題だ。

     残念なのは、今回公開された陸自の日報が派遣期間(04年1月~06年9月)の45%に当たる435日分にとどまったことだ。宿営地への攻撃が相次いだ04年から05年初頭の日報がすっぽり抜け落ちているのも解せない。引き続き調査すべきだ。

     公文書管理法が09年に成立する前の文書だが、「破棄した」としてきた防衛省の対応にも問題がある。

     今回の日報公開を機に、公文書を積極的に保存・公開する政治文化を根付かせたい。米国主導のイラク攻撃を支持した政府判断についても国会で改めて検証すべきだろう。

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