メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

かつての著名な実業家の日記に…

 かつての著名な実業家の日記にしばしば「真砂(まさご)町の一友人を訪(おとな)ふ」という記述があった。後に、国文学者が友人とは何者か苦心して調べると、政界の黒幕や財界の実力者ではなく「彼女」だった。「日記の上では存在を消してしまっていたのである」(井上ひさし「自家製 文章読本」)▲亡くなった後にプライバシーが暴かれるのは誰しも避けたい。インターネット時代の今は、見られたくないデータをパソコンやスマホに残さないことが肝心らしい。こうした「デジタル遺品」の整理は終活の課題だ▲一方で遺族が困ることもある。故人が利用していた有料サイトへの登録を解除できない。通帳のないネット銀行の口座がわからない。大事なデータの存在を知らせる「遺言状」が必要な時代なのか▲こちらは当事者に都合が悪くても後世に記録が残される仕組みになるだろうか。官庁の公文書だ。森友問題で発覚した改ざんを防ぐため更新履歴がシステムに残る電子決裁へ移行する。公文書の保存期間も原則1年以上にするという▲だが、これで安心なのか。役所が「ない」と言った文書があり、文書にあった内容を官僚が認めない。一連の問題で不安に思う人も多いに違いない▲ところで、井上さんは実業家の日記の話をなぜ「文章読本」に書いたのだろうか。「たしかに存在しているものを言葉はその働きによって巧妙に隠してしまうことができる」。言葉遣い一つで、ものごとの本質が変わるということか。政治家や官僚の顔が浮かぶ。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 自民党総裁選 発言・論点をはぐらかす 識者が指摘する安倍首相「ご飯論法」の具体例
    2. 自民党総裁選 石破氏、「応援なら大臣辞めろ」はパワハラ
    3. 質問なるほドリ NHK受信料、支払いは義務? テレビ設置日から 最高裁が初判断=回答・伊藤直孝
    4. NHK受信料 憲法判断 契約成立時期なども あす最高裁判決
    5. 金足農 寄付2億7000万円に 文化祭は一般公開中止に

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです