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ALL FOR 2020

東京へ ともに歩む

毎日新聞
アスリート交差点2020

1%だから走る!! 立ちはだかる壁になる=柔道・松本薫

 東京五輪を目指した理由は、三つありました。一つはリオ(デジャネイロ五輪)で負けて銅メダルだったこと。金をとっていたら完全に引退していました。二つめは、元々リオ後に結婚する約束をしていたので、復帰して東京五輪までに時間を残したタイミングで子供が生まれるか。三つめは自ら(東京五輪を目指す)権利を手放すよりも、追い越したい相手として立ちはだかる「壁」であった方が、みんなが強くなるだろうって思ったからです。この三つがそろったので、現役を続けることにしました。

 出産して本格復帰するまでに迷いはありました。子供はかわいいんで、一緒にいたいという思いはありましたし、出産1カ月後に最初に畳に立った時に、動ける体じゃないということも分かり不安になりました。でも、出産を発表した時に「東京五輪を目指します」と宣言したので、約束を破るわけにはいきません。

 母親になって、精神面は落ち着きました。練習で自分のやりたいことができなくても、イライラすることはなくなりました。貴重な時間を使って練習しているので、無駄もなくなりました。以前は体がきつくても流れで柔道の練習に行っていましたが、月火水と練習で追い込んで、木曜にどう見てもこの体じゃ練習できないという時は、行かなくなりました。その分、有酸素運動をして金曜に動ける体をつくったり、娘といる時間を長くしたりしています。

 今の時点で東京五輪に出られる可能性は1%くらいだと思います。試合感覚もつかめていません。これから勝つということはどういうことか、試合に向かうということはどういうことかをもう一度体にたたきこまないといけません。まだその土台にすら立っていない。でも、可能性がゼロじゃないなら、後悔したくないからやめられない。1%でも可能性があるから、東京五輪を目指して走るんです。このコラムのタイトルにはそういう思いを込めました。やるからには後輩に譲るつもりはありません。金メダルを目指します。=随時掲載(タイトルは自筆)


 Q 母が「鬼になれ」と言う

 松本さんは試合前に自分で気合を入れている姿が印象的です。私も母から「鬼になれ」と言われるのですが、試合前にどのようにして自分の気持ちを作り上げていますか。卓球・伊藤美誠からの質問

 A 鬼になれたら一番いいのですが、人間なので鬼になれることは無いと思う。伊藤さんと私の戦い方は全く別の物だから伊藤さんは鬼になる必要はないと思います。私は戦うことがとても怖くて、弱虫な自分を畳の上に上げるためには一番強い形になる必要があって、野獣という形を生み出した。伊藤さんには伊藤さんの戦い方がある。あなたは私と違ってそんなに弱い人間ではないと思う。自信を持って戦って大丈夫です!


 ■人物略歴

まつもと・かおり

 金沢市出身。女子57キロ級で、2012年ロンドン五輪金メダル、16年リオデジャネイロ五輪銅メダル。16年秋に結婚し、昨夏に長女を出産。今年1月に本格復帰した。べネシード所属。30歳。