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号外愛媛文書 首相が否定「指摘の日会ったことない」
縮む日本の先に

地方はいま/8 京都府京丹後市 過疎地の足、救う

常連客を乗せる運転手の坂田基司さん(左)と、見守る東和彦さん(右)。「海外で普及するウーバーのアプリなら外国人観光客も使いやすい」と東さんは期待する=京都府京丹後市で3月

 朝からの雨風で、日本海は荒れていた。3月下旬、京都府京丹後市の海沿いにある間人(たいざ)地区。1人暮らしの小倉美知子さん(89)が診療所との往復の車中で運転手に話し掛ける。「じゃがいも、もう植えなったか」「いんや、いつまでも寒いの困るな」。運転手は近所の知り合いだ。自宅前で降り、料金を払う。往復4キロ弱で計1000円ほど。タクシーの半額に近い。「こんな天気でも助かる。みんな知った人ですけえ」と笑顔を見せた。

     自家用車(白ナンバー)の運転手がお金をもらって人を運ぶ「白タク」は道路運送法で禁じられている。ただ、バスやタクシー(緑ナンバー)といった公共交通が不十分な地域では、NPO法人などが運行管理することで例外的に認められている。

     京丹後市は2004年、周辺6町の合併でできた。間人地区を含む丹後町は市の中心から最も離れた日本海沿いにある。合併後に人口は2割減り、08年にタクシーが撤退。民間バスは1時間に1本、幹線道路を走るだけだった。そのバスも人手不足が深刻で将来は路線や本数を維持できなくなる恐れがあった。

     NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」が手を挙げる。2年前、登録された地元の運転手が地元の客を自家用車で運ぶ「ささえ合い交通」を始めた。

     「公共交通空白地有償運送」と呼ばれるこうした取り組みは06年に始まり、各地に広がる。世界各国で運転手と客を仲介する米ウーバー・テクノロジーズ社の配車システムを導入したのは、ささえ合い交通が全国初だ。

     客はスマートフォンなどで同社の無料アプリを開き、居場所と行き先を入力。近くで時間のある運転手に配車要請が入り、自家用車で向かう。運賃収入は大半が運転手に支払われ、ウーバー社も手数料を受け取る。18人いる運転手の一人、坂田基司さん(67)は「依頼は週3、4回。収入はガソリン代を払って少しお小遣いが残る程度」と明かす。

     「究極の公共交通の仕組み」。NPO専務理事の東(あずま)和彦さん(65)は強調する。今までの先行例は新たに事務所を置く人手や費用がかかったり、電話で予約を受けた翌日にしか運行できなかったりといった不便さがあった。「アプリでのマッチングなら運転資金はいらず、配車もすぐにできる」。スマホを使えない高齢者からは、電話を受けて代理でアプリに入力する「配車サポーター」が好評という。

     思わぬ余波があった。ささえ合い交通が始まる1カ月前。丹後町同様タクシーが撤退した隣の2町に、京都市の二つのタクシー会社が営業所を構えた。

     ウーバー社は海外で運行に責任を持つ人を置かないまま一般の運転手が客を乗せる「ライドシェア」を広めてきた。トラブルの多発や大手タクシーの倒産が報じられ、日本のタクシー業界は反発を強めていた。東さんは「安全重視の日本ではライドシェアは実現しない」と見込むが、京都府タクシー協会の幹部は「海外のような形が広まる警戒感があり、2社に進出してもらった」と明かす。

     白と緑の新たなタクシーが京丹後のまちを走り始めることになった。東さんは「経緯はどうあれ住民にはありがたいが、同業者が一度撤退した地域で、ずっと続けてもらえるのか」と懸念する。1社の社長は「車椅子で乗れる車も入れて今は黒字。地元に根付きたい」と話す。

     東さんは今、100歳まで生きた祖父の言葉をかみしめる。生きるうえで大事なのは「食」ともう一つ、「行きたいところに行けること」--。「その一翼をささえ合い交通が担えているのかも。お年寄りの笑顔を見るとね」。満足そうに笑った。【安高晋】=つづく


    31道府県で実施

     公共交通空白地有償運送は17年3月現在、31道府県106団体で実施されている(国土交通省調べ)。最多は北海道で京都府や長野県が続く。15年の省令改正で、住民に加えて来訪者も利用可能になった。NPO法人や自治会などが実施する。

     京丹後市のような配車アプリの活用は進んでいない。背景にはライドシェアを警戒するタクシー業界の反対があるとされる。ただ、ウーバー社のアプリ導入を検討するタクシーも出始めており、過疎地での活用に理解が進む可能性もある。

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