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デジタルで学ぼう

文字だからこそつながれる LINEで悩み相談 長野県の取り組み

実際の相談例をもとにしたSNS相談のやりとりのイメージ=「SNSカウンセリング入門」(杉原保史、宮田智基著、北大路書房から5月刊行予定)より

 いじめ対策や自殺防止のため、子供たちが相談しやすい窓口を増やそうと、自治体とLINEが協力し「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」相談の試みが始まっている。長野県は昨秋、2週間限定で実施したが、電話相談の年間対応件数の2倍以上の547件に対応した。専門家は「寂しい時間を埋めるだけでも意義がある」と話す。同県の取り組みを紹介する。

     ●共感、やわらかさ表現

     昨年9月、長野県からSNS相談を委託された公益財団法人「関西カウンセリングセンター」(大阪市)では午後5~9時、10人のカウンセラーがパソコンに向かい、中高生らの悩みに寄り添った。相談は平均1時間。3時間に及ぶこともあった。なかには「もう死にたい」というような深刻な相談もあったという。

     カウンセラーの楠本幹夫さん(36)はSNSで相談を受けたのは初めて。対面なら表情やしぐさで共感を伝える時でも、SNSは文字にしなければ分からない。機械的な返事に見えないように表現に苦心し、やわらかい調子を出すために「そう思ってたんだなぁ」と語尾に小さな「ぁ」をつけたり「~」などの記号を使ったりした。

     相談は専用システムを利用。生徒は一般のLINEアプリ、カウンセラーはパソコンで応答する。内容は対人関係や恋愛、進路相談など幅広く、深刻度合いはさまざまだが、親や友達には話しにくい内容が多い。知らない相手だからこそ質問できることも多く、文字の方が口に出すより恥ずかしさが減るため相談しやすかったのではないかという。

     楠本さんは、生徒が「理想的な相談相手」を思い浮かべて打ち明けられるように、性別を明かさないことにも気を配ったと言い、「聞いてくれる人がいる安心感につながって『お守り』のように思ってもらえるといい」と期待を込めた。

     ●情報量の少なさが課題

     相談を受ける側にとってSNSを使う利点の一つは、対応に迷った時に、他のカウンセラーのアドバイスを得られることだ。これは対面の相談中にはやりにくい。同センターでは、その日の相談全体をチェックし、必要があれば他のカウンセラーの相談に乗る担当者を1人置いたことで予想以上に効果が上がったという。

     課題は「情報量の少なさ」。カウンセラーは通常、相手の反応を見ながら、気持ちを整理できるような言葉をかけ、前向きな変化を起こそうとするが、文字のやりとりで伝わる情報量は対面と比べ大幅に少ない。SNSでは働きかけがうまくいかず、堂々巡りで終わってしまうことがあるという。また、カウンセラーが、相談に緊急性があり、より密なコミュニケーションが必要と判断しても、電話や面談になかなかつなげることができないという悩みもある。長野県は「電話への誘導が課題」とした。

     一方、同センターのアドバイザーを務める京都大学の杉原保史教授は「SNS相談は寂しさを埋めることしかできなくても意味がある」と強調する。SNSへの投稿は、知らない誰かとも気軽につながれるが、昨年10月、神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件では悩みや苦しさを打ち明ける投稿が悪用された。杉原教授は「友達がいなくて1人で過ごす子供が、同じ時間スマートフォンに向かうなら、知らない誰かではなく、カウンセラーと会話する方がいい。子供が助けを求めやすい環境の整備が先決だ」と話した。

     ●全国に広がる取り組み

     長野県のSNS相談を受けた人は390人(1人が複数回相談するケースもあるため、件数としては547件)。同時に相談が集中するなどで、カウンセラーが対応できなかった人が1041人もいた。SNS相談への「ニーズ」は確実にあることがうかがえる。相談の内容は、交友関係や性格の悩みが多く、いじめは45件にとどまった。1回の相談でやりとりされるLINEの「吹き出し」の数は平均72回と多く、最多は606回に及んだ。

     文部科学省は今年度、自治体の取り組みに補助金を付けることを決め、全国18都道府県と仙台市、名古屋市など9市が実施を予定している。長野県も継続的な取り組みを今夏に始める見込みだ。【岡礼子】

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