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日本ワタシ遺産

登録No.36 会津さざえ堂(福島県会津若松市)/登録No.37 すがも鴨台観音堂(東京都豊島区)

写真・文 半田カメラ

これは、大仏写真家である半田カメラが、一般的に知名度は低いが素晴らしい!という国内の異空間スポットを、勝手に日本ワタシ遺産に登録、紹介するという、とても個人的で偏った企画です。

「見るも不思議、入るも不思議」究極の螺旋建築物

螺旋(らせん)階段を見つけるとなぜか、その一番下にある渦巻きの中心部に入り、上を見上げてしまう。もしくは最上階に行き、上からそのぐるぐると美しい曲線を見下ろしてしまう。同じような衝動にかられたことのある人は少なくないのではないでしょうか。螺旋には人を魅了する不思議な引力があると思います。私はそんな引力を持つ螺旋にフラフラと吸い込まれてしまう、螺旋引き込まれ体質の持ち主です。

しかも今回ご紹介するのはただの螺旋ではありません。究極の螺旋、二重螺旋構造の建築物です。螺旋がそのままスッポリと建物になってしまった、見るも不思議、入るも不思議な仏教建築。いったい二重螺旋構造とはいかなるものなのか。その引力に引き込まれること必至、摩訶(まか)不思議な二重螺旋の世界へと足を踏み入れてみましょう。

写真・半田カメラ

福島県会津若松市、白虎隊のお墓があることで有名な飯盛山に「会津さざえ堂」はあります。建立は江戸時代である1796(寛政8)年。木造で高さ約16メートルの六角のお堂です。ぐるぐると巻いたサザエの殻を連想させる独特の外観からその名がつきました。外観を見ただけでは中がどうなっているのかちょっと見当がつきません。ですが中に入ってみてもやはりピンとこない。なんだかよく分からないまま気付けば出口まで下りてきてしまった、という感じなのです。

写真・半田カメラ

入ってみても一度や二度ではよく分からないような構造を、文字で説明しようというのがすでに無謀な気もしますが、どうか頭のトレーニングだと思って想像してみてください。まず正面の入り口を入ると時計回りに螺旋のスロープがつづいていて、それをぐるぐると上っていきます。頂上までくると橋のようなものがあり、橋を渡ると上りとは逆の反時計回りのスロープがあり、またぐるぐると下り、いつしか建物の背面にある出口に出ます。これが会津さざえ堂の全貌ですが、ここで重要なのは、上ったスロープと下ったスロープは別物で、完全なる一方通行であるということ。ですから、お堂の中で人とすれ違うことはありません。

写真・半田カメラ

簡単にいえば、ふたつの螺旋状のスロープを組み合わせたもの。他の何かを例にあげるなら、真っ先に浮かぶのはDNA。DNAは二重螺旋構造です。ですが、話がさらに不可解になる可能性があるので、この例は避けたいところ。現代の構造物では、ショッピングモールやデパートの駐車場へつづく、ぐるぐると上がって行く通路、あれが二重螺旋構造なのですが……これもそこまで一般的でなく、どれもたとえとして決定打に欠けます。

写真・半田カメラ

そもそもなぜこのような不思議な構造になったのでしょう。現在はありませんが、もともとお堂の中心にある柱部分には西国札所の三十三の観音像がまつられていました。上り下りの一巡によって労せずして西国札所の巡礼が終えられるという、とてもありがたいシステムだったわけで、当時かなりの人気スポットだったそうです。そしてことが巡礼であるだけに、一方通行で人とすれ違わないという点は重要だったのだと思います。参拝者がたくさん押し寄せても順路がひとつであれば流れもスムーズになります。ただ不思議な構造というだけでなく、理にかなってもいたのです。

写真・半田カメラ

私がさざえ堂に入ってとても印象的だったのが、堂内で聞こえる音です。木造であるがゆえだと思いますが、ぐるぐるスロープを歩いている間、同じくお堂内を歩いている人の歩く音が「ギシ、ギシ……」と聞こえるのです。それが上から聞こえるのか、下から聞こえるのかも分かりません。一方通行で人と会わないのに、人が歩いている音だけが聞こえる。ぐるぐると螺旋をまわりながらそんな目に見えない足音を聞いていると、まるで方向感覚が失われるような不思議な感覚に陥ります。そしてちょっと不安になってきたころ、ぽっかりと出口が現れる。この空間はそんな不思議さなのです。

写真・半田カメラ

ここまで読んで会津さざえ堂に行ってみたくなった方がいたなら、耳よりな情報をお教えしましょう。実は、東京都内に会津さざえ堂を模して現代版にアレンジを加えた、さざえ堂の不思議空間を体験できるお堂があるのです。西巣鴨にある大正大学の校内に2013(平成25)年にオープンした「すがも鴨台観音堂」がそれです。学生さんたちが仏教を学ぶというだけでなく、地域の活性化や、地域の人々との交流の目的もあり建てられたものなので、大学内にありながら一般の方も参拝することができます。

写真・半田カメラ

外観をみれば、会津さざえ堂とよく似ているのは一目瞭然です。形状をそのままに、色鮮やかに美しく再現しているという感じです。違っているのは会津が六角であるのに対し、すがもは八角であること。それと木造と鉄筋の違い、スロープと階段の違いでしょうか。基本的な構造はまったく同じ二重螺旋構造です。こちらも正面の入り口から入り、梵字(ぼんじ)の書かれた螺旋階段をぐるぐる上がり、頂上に安置された聖観自在菩薩を参拝し、今度は色鮮やかな下りの螺旋階段をぐるぐる下りて、背面の出口に至ります。

写真・半田カメラ

上りの螺旋階段は黒い壁面、下りの螺旋階段は外光の入る色鮮やかな壁面、と上り下りに変化をつけることで、外観からも二重螺旋の構造がわかるように工夫されているのです。ちなみに色彩豊かな下り階段は日本画の大家、千住博画伯による「滝」の壁面です。

写真・半田カメラ

私にとって大きな違いに感じたのは、すがも鴨台観音堂は鉄筋なので、会津さざえ堂のような上や下を歩く人の足音があまり聞こえないということです。それが漠然と、過去と現在とを象徴しているように思えました。昔は人と人との距離がもっと近かったのに比べ、現代は人との交わりが薄れてきているように感じます。それが鉄筋の堂内が木造と比べ足音が聞こえにくいことと重なりました。一方通行で人とすれ違わない通路は、自分の人生に例えられます。ときには誰かと一緒になったりもしますが、基本はひとり歩き。人と会わなかったとしても、かすかに誰かの歩く足音が聞こえる。確かに誰かが自分の先を歩いているし、自分の後にも誰かが歩いてくる。そんなふうに例えると、さざえ堂はより楽しいのかなと思います。

写真・半田カメラ

螺旋をふたつ組み合わせた、ある意味シンプルな構造でありながら、言葉にすると不可解にしかならないさざえ堂。どういったものなのか伝えようと、私なりに言葉を尽くしましたが、結局は伝わっていないかもしれません。ぜひ一度、二重螺旋の不思議な引力に引き込まれてみてください。やはりあの空間は体験するしかありません。ここまで書いてきて、結局それが結論でした。

半田カメラ

雑誌や広告などの撮影が本業の女性カメラマン。趣味で日本中を旅するうち異空間的風景にハマり、巨大な仏像に夢中に。とうとう大仏写真家として開眼。初の大仏ガイド本「夢みる巨大仏 東日本の大仏たち」が書肆侃侃房より絶賛発売中です。詳細はこちらよりお願いいたします。

http://www.kankanbou.com/kankan/item/855

Website「恋する巨大仏」

http://handa-camera.wixsite.com/kyodaibutsu-in-love

Blog「気になったら とりあえず行ってみるブログ」

http://ameblo.jp/handa-camera/

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