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的川博士の銀河教室

497 宇宙実験室 「天宮1号」の落下/下 太陽活動が衛星の落ち方に影響

 寿命(じゅみょう)を迎(むか)えた人工衛星の多くは大気圏(たいきけん)に再突入(さいとつにゅう)して燃え尽(つ)きますが、一部は燃え尽きないで地上に落ちてくるため、地上での被害(ひがい)のリスクがあります(図1)。人工衛星の部品の中で、たとえば軌道(きどう)・姿勢制御用(しせいせいぎょよう)エンジンの燃料が入ったタンクなどは“燃え尽きにくい”のですね。

     軌道での寿命を左右するものとして、すぐ想像できるのは、軌道高度(きどうこうど)です。高度が700キロメートルを超(こ)えると、衛星が自然に落下するまでには300年くらいかかるのですが、高度が100キロメートルくらいだと2日ももたないで落ちてきます。

     また衛星の落ち方は、大気密度、衛星の重量や断面積などもおおいに関係します。特に大気密度に大きな影響(えいきょう)のあるのが太陽活動です。太陽から放射される紫外線(しがいせん)の量が一時的に増えると、地球の上層大気が膨(ふく)らんで、衛星への抵抗(ていこう)が大きくなるのです。

     高度が落ちてくる場合、まだ仕事をしている衛星は、搭載(とうさい)している制御エンジンを噴射(ふんしゃ)させて高度を元に戻(もど)す操作をしますが、使い終わったら、大気圏に突入(とつにゅう)させて大気との摩擦(まさつ)などで消滅(しょうめつ)させます。でも、大気中で溶(と)けにくい部品が載(の)っていると、地上まで落下するものもあるので、できるだけ溶けやすい材料を使うなど工夫もしています。

     特に宇宙ステーションのような大規模な衛星だと、何百キログラムも地上まで落ちるので、危険ですね。その場合は、どの国でもあらかじめ慎重(しんちょう)に落下計画を立て、制御エンジンで落下軌道を調節しながら、地球上の人が住んでいないところ(代表的なのは南太平洋の海域)に誘導(ゆうどう)していきます(図2)。でも、軌道を大きく左右する太陽の状態は常に変化しているので、落下しそうになる直前まで、どこに落ちるか、正確には予測がつかないのです。

     軌道から地上に落ちる場合、地球上は、陸よりも海の方が広いし、人間がいっぱい住んでいる場所の占(し)めている割合は小さいから、落下物体が大きな被害を与える確率は非常に小さいといえます。それでも制御落下することはもちろん、誠実に軌道情報を流すべきですね。

     現在運用中の国際宇宙ステーション(ISS)(図3)も、その役割を終えた時、どのように危険な軌道からそらせるかということは、これから検討することです。今回の中国のように成り行き任せにしないで、責任をもってこの史上最大の落下物が安全に落ちてくるよう配慮(はいりょ)してほしいと願っています。


    的川泰宣(まとがわやすのり)さん

     長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。


    日本宇宙少年団(YAC)

     年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp


     「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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