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教育の窓

部活廃止で教員働き方改革 名古屋市立小、試金石に

教員の指導を受けキャッチボールするソフトボール部の児童たち=名古屋市中村区の日比津小学校で、太田敦子撮影

 <kyoiku no mado>

     名古屋市は教員の負担軽減を目的に、市立小学校の部活動を2020年度末で廃止する。21年度以降は、学校ではなく地域や民間による活動を追求していく方針だ。教員の働き方改革を進める文部科学省は、中学・高校で部活動の指導者を外部から招く取り組みを進めており、専門家は名古屋市の小学校のケースが今後の部活動の在り方の試金石になるとみている。【太田敦子、三上剛輝】

     ●残業「月80時間超」

     「レフトに集まって」「はーい」--。午後4時、グラウンドに子どもたちや教員の声が響く。名古屋市中村区の市立日比津小学校では17日、新年度の部活動が始まった。真新しい野球グラブをはめた4年生の男児は「野球をテレビで見て、やりたいと思った」と声を弾ませた。

     野球とソフトボールは4~7月、音楽は4~11月、バスケットボールとサッカーは9~翌年2月が主な活動期間だ。火、木、金の週3日、夏場は6時、日没の早い冬場は5時過ぎに下校できるよう活動を終える。4年生以上が対象で、7~8割が参加している。

     教員はそれぞれの部を2~3人で担当する。現場から負担の重さを訴える声は上がってきていないが、鈴木登美雄校長は「部活後に採点や教材研究をすると学校を出るのが午後7時や8時になる。時間外勤務が月80時間を超える教員もいた」と明かす。

     市教委が3月に明らかにした部活廃止方針について鈴木校長は、「部活の顧問をする必要がなくなれば、教員が授業の準備に専念できる」と話す。河村たかし市長の「部活の民営化」発言もあり、「指導者が代わるだけで、子どもたちの放課後の活動がなくなるわけではない」と冷静に受け止めている。「今はキャッチボールの経験すらない子どもがいる。発達段階に応じた体力作りや、協調性を育む機会を設けることは必要だ」と述べ、子どもたちの活動が部活廃止後にどう保障されるか、21年度以降の動きを注視する。

     5年生の長女が野球部唯一の女子という同区の石川由加里さん(34)は「男女同じスポーツができるのは小学校までと思うので部活はありがたい。外部指導者になればもっと部活の種類を増やせるかもしれないですね」と期待を寄せた。

     ●熱心な教員は落胆

     一方で、これまで熱心に部活に取り組んできて落胆する教員や、今後の負担増などを懸念する保護者たちもいる。大会で上位入賞経験のある「強豪校」の校長は「バリバリ顧問をしてきた教員が今、校内で浮いている。この話題に触れづらい」と漏らす。また、バスケットボール部の副顧問時代、週末の試合のため20日間連続勤務したこともある30代の男性教員は「活動日を減らすと、不満を訴える人がいた」と保護者の反応を心配する。

     5年生の長男が野球部の同市中区、中井有里さん(37)は「部活のおかげで子どもの交流が広がった。先生にも本来の業務があるので負担が大きいなら廃止は仕方がないと思うが、今後は親の負担がどうなるのか気になる」と語った。

     ●保護者負担増は?

     市教委は、小学校の部活廃止後も「教員が携わらない形での運動、文化活動の機会は確保する」としている。教員OBや地域住民、大学などに幅広く参加を呼びかけ「人材バンク」を設立する方向で検討を進めている。ただ、すべての市立小261校に部活があり、その総数は運動系986、文化系228の計1214に上る。中学や高校も同様に外部人材の登用を進めていく中で、良質な指導者をどれだけ確保し、活動時間や回数をどの程度継続し、保護者の負担はどう変わるのか、いずれも未知数だ。

    中学・高校への波及効果に注目

     名古屋市教委が2017年度、部活動に関わる市立小学校の教員約2800人を対象に実施したアンケートでは、負担感の内容について複数回答で尋ねたところ、「授業準備や教材研究等の時間が十分とれない」とする回答が58・4%に達した。また、昨年4月~今年1月には過労死ラインとされる月80時間の残業時間を超えた小学校の教職員は、1715人と全6752人の25%に上り、うち6割超が部活動に携わっていた。

     部活の廃止はこうした調査を受けての決定で、「ブラック部活動」などの著書がある名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「教員の負担軽減の視点から廃止を決めたことに意味がある」と高く評価し、中学・高校への波及効果に注目している。

     ただ学習指導要領で「学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養(かんよう)等に資する」と部活動が位置付けられている中学・高校と違い、小学校の部活動の参加者は少ない。スポーツ庁の17年度の全国調査では、運動部に入っていると答えた小学5年生は、男子が29・4%、女子が20・0%だった。

     また、中学校以上になると、スポーツ推薦などで部活動が受験に関わる▽部活動を生徒集めの売りにする高校がある--などの複雑な事情も絡んでくる。

     内田准教授は「小学校のやり方を中学・高校でそのまま代替するのは難しい」と指摘しながらも、「名古屋市の今後数年間の取り組みは、将来的な中高の部活の行方を占う試金石になる」と話している。


     ■ことば

    小学校の部活動

     放課後にスポーツや芸術、科学などに取り組む部活動は、中学・高校と違って小学校の学習指導要領では触れられていない。4年生以上の同好の児童が共通の興味・関心を追求するものとしてクラブ活動を定めているが、これは授業時間内に行われ部活動とは別だ。そのため文部科学省は全国でどの程度行われているか、詳しい実態を把握していないという。スポーツ庁が全国の小学5年生全員を対象に運動習慣などを調べる「全国体力・運動能力、運動習慣等調査報告書」(2017年度)では、都道府県別で公立校男子、同女子ともに運動部に入っているとの回答にばらつきがあった。いずれも最も少ないのは茨城で、最多は熊本だった。

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