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余録

中村汀女は良妻賢母の俳人といわれた…

 中村汀女(ていじょ)は良妻賢母の俳人といわれた。日々の暮らしの中で感じたことを文字に重ねた。今も作品が胸に響くのは、その柔らかな心に触れるからだろう。わが子を詠んだ句も多い。<咳(せき)の子のなぞなぞあそびきりもなや>▲58年前こんな歌を作った母がいた。<含む乳(ち)の真白きにごり溢(あふ)れいづ子の紅(くれない)の唇生きて>。皇后美智子さまである。幼子は成長し、来年のきょう、今の天皇陛下に代わって即位される▲美智子さまは即位10年に際しての記者会見でこう述べた。「皇室の私どもには行政に求められるものに比べ、より精神的な支援としての献身が求められているように感じます」。国民に対しても、わが子へ無償の愛情を注ぐ母のように、献身的に接しようと思われたのではないか▲そのお気持ちが強く表れたのは災害の現場だった。1993年、北海道南西沖地震による津波で甚大な被害を受けた奥尻島。美智子さまは遺族から遺影を受け取り、抱きしめた。どれほど悲しみを癒やしたことだろう▲東日本大震災の遺族への思いも同じだった。母親を津波にさらわれた4歳の女の子が母親にあてて手紙を書きながら、うつぶして寝ている。その写真を見て詠んだ歌だ。<「生きてるといいねママお元気ですか」文(ふみ)に項傾(うなかぶ)し幼な児眠る>。まさに母の視線だ▲植樹祭で詠んだ歌がある。<初夏(はつなつ)の光の中に苗木植うるこの子どもらに戦(いくさ)あらすな>。初夏が近づく頃、新天皇即位を見届けて皇后としての長いお務めが終わる。母の日も近い。

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