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社説を読み解く

南北首脳会談 「非核化」優先か「南北」重視か=論説委員・海保真人

手を取り合って軍事境界線を越える北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)韓国の文在寅大統領=韓国・板門店で4月27日、韓国共同写真記者団

朝日・新たなページ/産経・大きな前進なく/毎日・流れ止めるな

 米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が相対する史上初の米朝首脳会談を見据え、4月27日に南北首脳会談が開催された。それに先立って同17日、18日には日米首脳会談も開かれた。

     南北会談に関しては、韓国紙の間でも評価が大きく分かれた。北朝鮮の非核化への姿勢に焦点を当てるか、それとも南北融和の度合いを重視するかという判断の違いである。

     非核化への実際の行動は重要だが、南北融和の進展がその環境を醸成することも確かである。日本の各紙の論調にも濃淡があった。

     一方、急速な外交の動きに対応し日本がいかに米国や韓国に影響力を行使できるのかも切実な問題だ。日本各紙の社説とも、外交の真価が問われる局面だと位置づけている。

           ◇

     平昌(ピョンチャン)冬季五輪をきっかけとした対話の動きは、3月に入り南北首脳会談、米朝首脳会談の開催が電撃的に決まった。同時に北朝鮮は非核化の意向を示し始めた。

     このため、板門店の韓国側施設で開かれた南北首脳会談は、金氏が韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領にどこまで非核化の意思を明らかにするかが焦点とされた。

     だが、共同宣言では「完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現する」という曖昧な文言にとどまり、むしろ全般的に南北融和に力点が置かれた。

     韓国紙の中で保守系の朝鮮日報は社説で「北朝鮮の核廃棄について深い議論があったのか疑わしいほど、貧弱な内容だけが合意文に盛り込まれた」と酷評した。北朝鮮の核廃棄が完全に成し遂げられるまで制裁と圧力が維持されなければならないのに、「合意文には非核化より経済協力と交流がより多く盛り込まれている」と批判した。

     これに対し革新系のハンギョレ新聞は会談を「8000万の民族とともに祝う民族史的事件」と形容し、「朝鮮半島に戦争のない新しい平和の時代が開かれた」と絶賛した。さらに、朝鮮半島の「非核化」を明示した共同宣言が「北朝鮮と米国のビッグディールを成し遂げるのに大きく寄与するだろう」と論じた。

     正反対の評価である。非核化の裏付けを優先するか、南北融和に重きを置くか、が判断の分かれ道となっている。

     日本の各紙の社説はおおむね、核問題に関して物足りなかったとの見方を示した。毎日新聞は「北朝鮮の具体的な行動が盛り込まれなかったのは残念だ」と評しつつ、「ようやく芽生えた非核化の流れを決して止めてはならない」と記した。

     朝日新聞は会談全体を「いまも冷戦構造が残る朝鮮半島に、新たなページが開かれつつあることを印象づけた」と前向きに評価した。非核化問題については「南北だけでは解決できないという限界も浮き彫りにした」と一定の理解を示した。

     産経新聞は金氏の「微笑(ほほえ)み外交」を批判し、「大きな前進があったようにとらえるのは、大きな間違いである」と断じた。

     非核化への新たな姿勢が期待されたのは、南北会談の1週間前の4月20日、北朝鮮が核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の中止を突然表明したからだ。米朝首脳会談へ向けて、軟化姿勢を示す布石であろう。

     この際の社説で毎日は、対話開始への意思表示だとするならば、「まずは前進」と一応評価した。だが、既存の核兵器放棄への言及がなかったことから、「核保有国として、米国と対等な立場で軍縮交渉に臨む考えを示唆したとも言える」と推測、「現段階での過大評価は禁物だ」とくぎをさした。

     読売新聞も「核実験の中止だけで、脅威が減じるわけではない」とし、産経は「これは、『核保有国宣言』に他ならない」とした。

           ◇

     非核化の中身の精査は、6月初旬までに開かれる米朝首脳会談へ持ち越しとなった形だ。

     その点から南北会談に先立ち開かれた日米首脳会談は重要な意味を持つ。米朝会談へ向けて安倍晋三首相がトランプ氏にいかに日本の利害を伝え、認識をすり合わせられるかが焦点となったからだ。

     この会談で両首脳は(1)核とミサイルの「完全かつ検証可能で不可逆的な方法での廃棄」を目指し、非核化まで「最大限の圧力」を維持する(2)日本が射程に入る短・中距離ミサイルの放棄も求める(3)日本人拉致問題の早期解決に最大限努力する--との方針で一致した。

     各紙の社説は、おおよそこの結果を評価した。毎日は「日米の明確なスタンスを世界に示した」と評した。ただし、北朝鮮がすべてのミサイル廃棄や拉致問題を議題とするのに反発することも予想され、その場合「米国がそれらを後回しにして交渉を前に進める可能性」を不安点として指摘した。

     日本経済新聞は会談を「外交・安保の観点からみると、日本にとってほぼ満点」とたたえながら、米国頼みだけでは疑問が残るとし、「朝鮮半島の安定に向けたロードマップづくりに日本の声を反映させる努力が必要だ」と提言した。

     朝日は辛口に「米国頼みの外交を続ける安倍首相」に疑問を投げかけ、「朝鮮半島問題に精通していないトランプ氏が拙速な判断を下さないか、対話から一気に対決へかじを切らないか」と懸念を示した。

     本番は米朝首脳会談となる。北朝鮮の非核化をめぐり、これまでのところさまざまな評価が交錯しているが、最終的な評価はトランプ、金両氏の合意内容で決まるだろう。その見通しは各紙とも変わらない。


    南北首脳会談での各社社説の見出し

    ・毎日=非核化への流れ止めるな

    ・朝日=平和の定着につなげたい

    ・読売=非核化の道筋はまだ見えない

    ・日経=板門店宣言を北の完全非核化につなげよ

    ・産経=微笑みより真の非核化を

     ※いずれも4月28日


     「社説を読み解く」は、前月の社説の主なテーマを取り上げ、他紙とも比較しながらより深く解説します。ご意見、ご感想をお寄せください。〒100-8051毎日新聞「オピニオン」係 opinion@mainichi.co.jp

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